日々、指導業務に携わらせていただいていると、関節の痛みを訴える方が多くいらっしゃいます。
そのなかでも膝の痛みは圧倒的に多く、そのほとんどが【変形性関節症】です。
この記事では、
- 変形性関節症の発症メカニズムや症状
- 各関節に発症する変形性関節症
について、初心者向けに解説していきます。
目次
変形性関節症とは
関節の軟骨の変性、摩耗から関節面の破壊が起こって、これに身体が防衛反応として過剰反応し、関節面を軟骨ではなく骨で硬化させてしまったり、骨棘という骨のトゲを形成し関節面を広げようとしたりと骨組織で増殖してしまう状態をいいます。
身体にとっては防衛反応のつもりですが、この骨増殖が原因で……
- 関節の変形と疼痛
- 運動制限を起こす
進行性の疾患です。

これは膝のx線画像ですが、よく見ると内側の関節の隙間が、少し狭くなっていることもわかります。
症状が進行すると、変形によって形成された骨棘が折れて、欠片になって関節内を動き回り、狭くなった関節に挟まることもあります【関節ネズミ】。
原因には、1次性と2次性があります。
1次性は老化、加齢です。
いいかえれば原因になる疾患がなく、関節の経年劣化で発症するものを指します。
専門的には【関節の退行性変性】といいます。
中年期以降にみられます。
2次性は原因の疾患を経て発症するものを指します。
こちらは年齢問わずで、若くても発症します。
スポーツなどによる関節のケガ、先天的な形態異常(奇形)、代謝疾患などがその原因です。
変形性関節症の症状
関節周囲の、
- 疼痛腫脹
- 可動制限
- 違和感
などです。
変形性関節症を発症している関節に無理な運動を強いると、翌日にロック(拘縮)が掛かってしまうこともあります。
ロック(拘縮)とは
関節可動域が著しく低下する状態を指します。
各関節に発症する変形性関節症
各関節の変形性関節症について簡単に説明します。
変形性股関節症
そのほとんどが2次性といわれています。
割合にして80%です。
原因疾患は……
- 先天性股関節脱臼や亜脱臼
- 臼蓋(きゅうがい)形成不全
などです。
臼蓋(きゅうがい)形成不全は生まれつき股関節の受け皿(骨盤側)が小さいものをいいます。
これらは女性に圧倒的に多いため、必然的に変形性股関節症は女性に多く発症します。
なぜ股関節脱臼や臼蓋形成不全が起きるかというと、まず遺伝的素因です。
家族に同じ股関節症状があるとその子供も発症しやすいと言われます。
骨盤の形などが遺伝し似たような骨格になりやすいためです。
さらに女児に多い理由は、エストロゲン(女性ホルモン)による関節の弛緩性アップによるものです。
また出生前の要因では逆子(骨盤位)分娩の影響、出生後は股関節の発育不全やオムツの問題、下肢の伸展を強制するような脱臼誘発姿勢などがあります。
2次性のその他の原因疾患には化膿性股関節炎、ペルテス病、大腿骨頭すべり症、大腿骨頭壊死症、関節リウマチなどがあります。
ペルテス病
男児に多くみられる疾患。6~8歳くらいまでに発症する。何らかの原因で大腿骨頭への血行が障害され、骨頭の無腐性壊死が生じる疾患。
症状は……
- 歩行や立ち座り動作
- 寝返りなどの股関節運動時の運動時痛
- 跛行(片脚を引きずる動作)
- 可動域制限
です。
トレンデレンブルグ徴候陽性になります。
トレンデレンブルグ徴候
股関節外転筋力低下のため、発症している関節側で片脚立ちしたときに、骨盤が健康な脚側に下がる(傾く)徴候のこと。この状態で歩くと身体が揺れているようにみえる。
変形性膝関節症
股関節と比較するとこちらは圧倒的に1次性が多いです。
理由は単純に……
- 老化
- 肥満
などです。
また性ホルモンの影響、骨格的な特徴から股関節と同じく女性に多い疾患です。
閉経後は女性ホルモンの急激減少に関節は耐えられず、変形してしまう事も多いです。
以上を踏まえると、45歳以上で太った女性は要注意です。
2次性の場合の原因疾患は……
- 半月板損傷
- 靭帯損傷
- 骨折
- 化膿性関節炎
- 関節リウマチ
などです。
症状はスターティングペインといわれる「運動開始時痛」が特徴的です。
同じ姿勢を長時間続けて、そこから動き出すときに痛みが走ります。
起床時やデスクワークからの立ち上がりなどです。
動いていると痛みが消えてきます。
痛みの出る部位はそのほとんどが内側です。
また進行すると関節腫脹がみられ、膝のお皿(膝蓋骨)が見えにくくなってきます。
またお皿の下に関節液が貯留して膝蓋骨の浮動感を感じます。
関節液が膝裏にも溜まることがあり嚢腫(のうしゅ)となってしまうことも。
この嚢腫をベーカー嚢腫といいます。
ピンポン玉のような塊が膝裏にできてしまうので、ただでさえ可動域制限があるのに余計動かしにくくなります。
進行が末期になると、膝関節の内反変形でO脚になり、膝を曲げることが困難になります。
ここまで来るころには、関節運動はあまりできないので、膝周りの筋力もガタっと落ちます。
特に大腿四頭筋の萎縮は顕著です。
よって階段の下り動作などで制動(ブレーキ)動作が上手く使えずに痛みと不安定感を感じます。
変形性足関節症
足関節は距骨、脛骨、腓骨から形成される距腿関節(きょたいかんせつ)のことを指します。
足関節は構造的に強固なので、あまり変形性関節症になってしまうことはありませんが、発症する場合はほとんどが2次性です。
原因は……
- 脱臼、骨折、捻挫など外傷
- 感染による化膿性関節炎
などです。
特に捻挫は治療を軽視することが多いため、一番多い原因疾患です。
捻挫を舐めてはいけませんよ~。しっかり治療しましょう。
症状は……
- 疼痛
- 腫脹
- 可動域制限
- 変形
- ゴリゴリ、ジャリジャリなどの軋轢音など
基本的に他の関節と同じです。
遊離軟骨(関節ネズミ)を伴うこともあります。
変形性肘関節症
肘はオーバーユースによる発症が多いです。
要は使い過ぎです。
野球選手の投球動作が有名ですね。
ボクシングのパンチ、相撲の「鉄砲」動作なども発症原因になります。
またチェンソーなどの振動工具を使う仕事に従事される方にも発症される方が多いです。
肘周囲の慢性的な痛みを感じ、さらにこの痛みも進行とともに徐々に強くなります。
また関節拘縮(ロック)も起こりやすく、特に肘を酷使した後は顕著です。
離断性骨軟骨炎といって剥がれた関節軟骨や骨棘(関節ネズミ)が関節に挟まってしまって炎症が出ることも多いです。
可動制限は、肘関節の屈曲・伸展です。
前腕の回旋(回内・回外)はあまり制限されません。
軋轢音が出ることもあります。
肘の内側の尺骨神経溝に骨棘が形成されると、そこを通る尺骨神経が圧迫されて神経症状が出ることもあります。
これを肘部管(ちゅうぶかん)症候群といいます。
変形性関節症の治療
保存療法と手術の2つがあります。
進行が末期で症状が重度でなければ、基本的には保存療法です。
生活の指導がメインになります。
- 体重を減らす
- 関節に負担の掛かる姿勢や動作の制限
- 外用薬で痛みのコントロール
ちなみに内服の鎮痛剤は出来るだけ使用せず、痛みが強い時のみ使用します。
温熱療法も有効です。
関節を温めて可動域を向上させ、慢性的な痛みを感じにくくさせます。
さらに温まって動きやすくなったその時にその関節に関わる筋肉を鍛えて筋力を付けていきます。
日常生活動作では、装具やテーピングなどで関節を保護して動作してあげると、不意の拘縮や疼痛、変形の進行を防止できます。
当方クライアントにもいらっしゃるのですが、痛みがあるのに、装具やテーピングの見た目を気にされて、使わない方が多いです。
私から言わせれば、見た目なんて二の次です。
進行の防止が何よりも大切です。
また日常動作で痛みを軽減できることは、QOL向上の観点からも同じように大切です。
積極的に関節を保護するグッズは使っていった方がよいです。
さいごに
総論と各論で基本的な情報をまとめてみました。
どの関節にもいえますが、発症をさせない為にも、日頃から筋力を付けたり、柔軟性を維持することが大切です。
また発症してしまっても、進行を遅らせることができます。
どんな人であれ、年齢を重ねていけば、徐々に関節は劣化します。
これは避けようのない自然の摂理です。私も30代後半から古傷が原因で右膝と左肘の変形性関節症を発症しました。
与えられた人生の中で、どのタイミングで関節が傷んでくるかは、結構自分の心掛け次第なところもあります。
もちろん不慮の事故やスポーツなどでの外傷などで壊れてしまう事もありますが、こういった整形外科疾患ほとんどは加齢が原因ですので、是非とも自身の身体のメンテナンスについて再考して頂ければと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。