この記事では「足根管症候群(そっこんかんしょうこうぐん)」について書いていきます。
疾患名称としては聴き慣れませんが、症状としては比較的多いです。
- 歩くと足の裏や踵が痺れるまたは痛い
- 足裏の感覚がおかしい
などが代表的な症状です。
この「足根管症候群」の原因や対処法を見てきましょう。
目次
足根管症候群とは?
まずは「足根管って何よ?」って話からです。
読み方は”そっこんかん”です。とりあえず次の図をご覧ください。
出典:工藤慎太郎 運動器疾患の「なぜ?」がわかる臨床解剖学 医学書院
右足を内側から見た図です。
赤丸部分が指すところに、内くるぶしと踵の骨を結ぶ屈筋支帯(くっきんしたい)というのがあります。
この屈筋支帯が膜状のトンネルになって、各種屈筋の腱や後脛骨動脈・後脛骨静脈・脛骨神経がここを通過します。
イメージとしてはたくさんのケーブルがバラバラにならないように束ねるような感じでしょうか。
実際に腱が脱臼しないように機能しています。
足根管症候群というのは……
屈筋支帯が何らかの原因で束ねる力が強くなり、
ここを通る神経や血管を圧迫してしまうことで、
足の裏に様々な症状が起こること
をいいます。
陽性の場合、足根管付近を圧迫したり叩くと、痛みや痺れが放散します。
これをティネル兆候といいます。
自分自身で試してみて、陽性であれば病院で正確な診断を受けましょう。
足根管症候群の代表的症状
痛む部位は、内くるぶしの後ろから下にかけて、足底(足の裏)まで放散します。
立って荷重したり、歩いたりするとさらに足裏の痛みや痺れが増悪します。
重症だと足が付けなくなるくらいです。夜間も痛みが増悪します。
痺れが強くなりすぎると、足裏の感覚もおかしくなってきます。
感覚が鈍ることで、足の裏がずっとくすぐったい感覚だったり、虫が這うような感覚だったり、とにかく不快です。
血管が圧迫されることで、冷えも生じます。
当方のクライアント様で足根管症候群の診断を受けた方も、この例に漏れず上記の症状を併発されています。
足根管症候群の原因
足根管が狭くなり内圧が上がると、神経や血管を圧迫する事はわかりました。
では、その足根管が狭くなる原因には何があるのかを見てみましょう。
筋肉
屈筋支帯は、ヒラメ筋や腓腹筋といった下腿三頭筋(いわゆるふくらはぎ)の筋膜からも繋がっている為、ふくらはぎが硬くパンパンになると、発症しやすくなります。
筋膜とは、筋肉を包む薄い膜のことです。筋肉を守ったり、収縮や弛緩をしやすくする為だったり、他の部位と干渉させないための摩擦の軽減などの役割があります。
イメージとしてはソーセージの皮の部分です。
出典:坂井建雄 プロメテウス解剖学アトラス 医学書院
ご覧のとおり、下腿筋膜と屈筋支帯は連続性の結合組織性の被膜であることがお分かり頂けます。
立ち仕事や座り仕事ではヒラメ筋や腓腹筋に疲労が溜まり、筋膜もまとめて硬くなってしまうため、屈筋支帯も柔軟性を失います。
外傷や炎症
踵の骨、内くるぶしの骨折などでは、屈筋支帯が伸びすぎたり、縮みすぎたりします。
捻挫なんかも同じです。
これらは直接的に屈筋支帯の形を変えてしまうので、足根管内圧が上昇する原因になってしまいます。
二次的にこういった外傷後に足根管内で炎症反応がおきますが、治癒の過程で足根管を通る筋肉の腱が瘢痕化したときも、通常よりも腱が太くなってしまうために同じく内圧上昇を呈します。
こういった腱の炎症も原因になることを考えると、外傷ではない慢性的な単なる腱鞘炎、関節リウマチなどでも足根管症候群は起きるということです。
腫瘍や変形
ガングリオンや腫瘍が足根管内にできてしまった場合も内圧が上がります。
また、筋バランスが崩れることで、足首のアライメントが崩れても、足根管に負担が掛かります。
出典:工藤慎太郎 運動器疾患の「なぜ?」がわかる臨床解剖学 医学書院
このように極度の外反足、内反足の場合は症状は顕著です。
内反足の場合、単純に足根管が狭くなりますので、圧迫を受けやすくなります。
外反足では偏平足を助長することから脛骨神経が強く牽引されることで症状が出ます。
血管
加齢により、動脈硬化が起きたり、静脈瘤ができると足根管症候群を発症しやすくなります。
静脈瘤は血管が真っ直ぐな通路ではなく、ぐちゃぐちゃにこんがらがった状態です。
この部分で血流を悪くしてしまうために、本来心臓に戻る血液が溜まってしまい、静脈が太くなって足根管を圧迫してしまうのです。
動脈硬化も血管が狭くなっていますから、血が流れにくいです。
こちらは足根管の圧迫というより、栄養が豊富な動脈血が滞ることでそこを通る脛骨神経の栄養不足が起き、足根管症候群を発症します。
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足根管症候群への対処法
MRGはパーソナルトレーニングと鍼灸マッサージをサービス提供していますので、ここでは外科的治療法は除外します。
ということで、ガングリオンや腫瘍、骨折などの強烈な外傷が原因の場合はお医者さんに診てもらいましょう。
それ以外の対処法をご紹介します。
筋力不足への対処法
膝から下にはたくさんの筋肉が存在します。
ここでは詳しい説明は割愛しますが、このたくさんの筋肉達で足首周りのバランスを作っており、正しいアライメントをキープしています。
とくに「足根管症候群」では、偏平足にならないように、足裏の内側のアーチを維持することが大切です。
万遍なく下腿の筋群をトレーニングすることが大切ですが、最も大切な筋は……
後脛骨筋(こうけいこつきん)
です。
内返作用が強い筋なので、足裏アーチの形成の主役級の筋肉です。
小指側に乗るように踵を持ち上げるだけでトレーニングできますので挑戦してみましょう!
柔軟性への対処法
下腿筋膜と屈筋支帯は繋がっているということから、ふくらはぎを緩めておくことが大切です。
特に抗重力筋と呼ばれるヒラメ筋は常に負担が掛かっていますので、しっかりケアしましょう。
鍼灸やあん摩マッサージ指圧、ストレッチングなどを駆使して比較的楽に緩めることが可能です。
出典:日本理療科教員連盟・東洋療法学校協会編 新版 経絡経穴概論 第2版 医道の日本社
上記の経穴(ツボ)を揉み解したり、指圧することは下腿の筋を緩めるのに有効です。
血管への対応
特に静脈瘤では、脚がむくみます。
浮腫(むくみ)が足根管を圧迫するため、弾性ストッキングなどでむくみを軽減させてあげましょう。
またオイルなどを使って、心臓に向かってのマッサージも有効です。
足に溜まった血液を心臓に戻すことが大切です。
何らかの疾患で二次的に発生している浮腫の場合は、まずはその疾患の治療を優先しましょう。
さいごに
結局はどんな整形外科疾患とも同じで、筋力や柔軟性の問題が大きな原因になることがお分かり頂けましたか?
バランスの良い筋力と、適度の柔軟性を維持するためにも筋力トレーニングやストレッチングを習慣にして、無駄に整形外科的疾患を罹患してしまうことを防ぎましょう。
自身の人生は豊かになりますし、何よりも医療費の削減になります。
神経圧迫系の疾患は、放っておくと戻りづらくなります。
神経という組織は靭帯や腱と一緒で「可塑性(かそせい)」が強く、一度悪い状態になるとそのままになってしまいます。
こういった病を防ぐために日々の努力の徹底と、それでも症状が出てしまったらすぐに治療をしましょう。
MRGでもトレーニングや施術のご相談を承ります!!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
《参考文献》
工藤慎太郎 運動器疾患の「なぜ?」がわかる臨床解剖学 医学書院 2012年