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【肘の解剖学・運動学】筋トレで肘を傷めないために知っておくべきこと

肘の解剖学

腰、膝、肩には気を使うけど、トレーニングで肘を大切に扱う人は少ない印象があります。

関節は消耗品です。

そのうえ肘関節は痛めやすいところです。

一度傷めるとなかなか回復しないどころか、そのままの状態で落ち着いてしまうこともあります。

大切な肘を傷めないようにこの記事では意外にもケガをしやすい肘関節(ちゅうかんせつ)の解剖と運動機能の基本についてまとめていきます。

そもそも肘という部位はどこなのか?

肘

「肘といえばだいたいここ。」とぼんやりと言える人は多いと思います。

ここでは厳密に定義しておきます。

人間には腕(上肢)がありますが、腕は……

  • 上腕部
  • 前腕部
  • 手部

に分かれます。

上肢解剖

出典:プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 坂井建雄 医学書院

肘はこのうちの上腕部と前腕部の移行部を指します。

さらに具体的にすると、上腕と前腕部をつなぐ肘関節(ちゅうかんせつ)やその周辺に存在する筋肉や腱、靭帯などを含めて肘と呼びます。

肘を構成する骨

さきほど肘は上腕部と前腕部から構成されると記しましたが、それらを形作る骨は……

  • 上腕骨
  • 橈骨(とうこつ)
  • 尺骨(しゃっこつ)

という3つの骨です。

肘関節肘関節

出典:プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 坂井建雄 医学書院

肘は上腕部を形作る上腕骨と前腕部を形作る橈骨(とうこつ)尺骨(しゃっこつ)から形成されます。

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肘を構成する関節

肘には関節が3つあります。

  • 腕尺関節(上腕骨と尺骨で形成)
  • 腕橈関節(上腕骨と橈骨で形成)
  • 上橈尺関節(橈骨と尺骨で形成)

これら3つの関節を総称して肘関節といいます。

さらに肘関節を機能や形状によって分類した場合……

  • 腕尺関節⇒蝶番関節
  • 腕橈関節⇒球関節
  • 上橈尺関節⇒車軸関節

に分類します。

蝶番関節球関節車軸関節

肘の関節運動

前述の各関節にはそれぞれ担当する関節運動があります。

  • 腕尺関節⇒肘関節の屈曲・伸展
  • 腕橈関節⇒肘関節の屈曲・伸展、前腕回旋(回内、回外)
  • 上橈尺関節⇒前腕の回旋(回内、回外)
肘関節肘関節

それぞれの動作の関節可動域は……

  • 屈曲:145度 伸展:5度
肘関節可動域
  • 回内:90度 回外:90度
前腕可動域

肘関節の結合組織

基本的にどの関節においても、その周囲には補強のための関節包靭帯が存在します。

肘関節も同様です。

靭帯や関節包は結合組織に分類されます。

肘関節

出典:プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 坂井建雄 医学書院

まず、関節全体を包む関節包です。

関節包

関節包は線維性の膜で、内側に滑膜(かつまく)が存在します。

滑膜からは滑液(かつえき)と呼ばれる潤滑液が分泌されます。

  • 関節の動きを滑らかにする
  • 関節運動とともに関節全体に行き渡ることで、血管の存在しない関節内に栄養を送る

ことが滑液の大切な役割です。

さらに関節包は、左右外側の強力な側副靭帯(そくふくじんたい)に補強してもらいながら、強固な体制で関節を保護しています。

側副靭帯

側副靭帯には……

  • 内側側副靭帯
  • 外側側副靭帯

があり、扇状の構造で関節の安定を保持しています。

さいごに橈骨と尺骨を固定する橈骨輪状靭帯(とうこつりんじょうじんたい)です。

橈骨輪状靭帯

この靭帯は、橈尺関節(上橈尺関節)の固定、わかりやすくいいかえると橈骨と尺骨の連結に大きな役割を果たします。

尺骨側から橈骨の前と後ろを通り、橈骨頭を包んで尺骨側に押し付けています。

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肘に関わる骨格筋(筋肉)

肘に関わる骨格筋(筋肉)

には大まかに分けて……

  • 肘関節を曲げ伸ばしする筋肉
  • 前腕を回旋する筋肉

があります。

それではそれぞれを見ていきましょう。

肘関節を曲げ伸ばしする筋肉

専門的には肘関節の屈曲、伸展といいます。

これらに関与する筋肉は……

  • 肘を曲げる(屈曲する)筋肉:上腕二頭筋、上腕筋、腕橈骨筋
  • 肘を伸ばす(伸展する)筋肉:上腕三頭筋、肘筋

になります。

肘屈筋腕橈骨筋肘伸筋

出典:プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第2版 坂井建雄 医学書院

上腕二頭筋

上腕二頭筋

出典:プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第2版 坂井建雄 医学書院

上腕二頭筋はいわゆる【力こぶ】の筋肉として有名です。

長頭短頭の2つの筋頭を持っていることが大きな特徴です。

長頭の腱は肩甲骨の関節上結節というところから起始し、上腕骨頭を迂回するように乗り越え、肩関節包内の結節間溝を走行して、上腕前面に出ます。

短頭の腱は肩甲骨の烏口突起というところから起始し、直線的に上腕前面に出ます。

長頭に関しては筋腱の走行から考えて、肩甲骨の関節窩に上腕骨を強く固定する働きがあります。

長頭と短頭は上腕の真ん中付近よりやや下側で合流し、筋腹が互いにくっつきます。

停止部は橈骨の橈骨粗面というところと、前腕筋膜の2か所になり、両者とも肘窩(ちゅうか)という肘関節前面のくぼみにその付着腱に触れることができます。

支配神経は筋皮神経です。

ちなみに橈骨粗面に付着することから、肘関節の屈曲はもちろんのこと、後述の前腕の回旋(肘関節の回外)にも強く関与します。

逆にいうと、前腕が回内しているときは、肘関節の屈曲筋としては作用が下がります。

このことを考慮して、上腕二頭筋を効果的に鍛えるには、前腕回外位でバーベルカールを行いましょう。

注意点としては、酷使して疲労を溜めすぎて筋が硬くなると、それにあわせて長頭腱が肥厚し、結節間溝という狭い隙間を走行する長頭腱と上腕骨との摩擦が高まります。

上腕二頭筋長頭腱炎という肩関節周囲炎のひとつになってしまいますので、ストレッチやマッサージなどで常に柔らかく保ちましょう。

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上腕筋

上腕筋

出典:プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第2版 坂井建雄 医学書院

上腕二頭筋の下層にあり、前腕の回旋ポジションを問わず、シンプルに肘関節の屈曲に関わります。

上腕二頭筋の協力筋です。

上腕骨の前面、下半分から起始し、尺骨粗面に停止します。

支配神経は筋皮神経です。

上腕筋は、前腕を中間位、または回内位の状態でバーベルカールを行うと鍛えられます。

上腕筋は上腕二頭筋の下層に位置するということで、この筋を大きくすると、上腕二頭筋の高さが増し、迫力のある上腕部を形成できます。

腕橈骨筋

腕橈骨筋

出典:プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第2版 坂井建雄 医学書院

前腕外側のふくらみを作る筋肉です。

正式な解剖学上では前腕伸筋群に属しますが、働きは肘の屈曲なので記載しました。

上腕骨下部外側縁に起始し、橈骨茎状突起に停止します。

支配神経は橈骨神経です。

ちなみに前述の上腕二頭筋、上腕筋は筋皮神経支配でしたが、筋皮神経に麻痺がおこり、この両筋が働かなくなっても、腕橈骨筋の強力な肘屈曲作用により肘を曲げる動作が可能です。

上腕三頭筋

上腕三頭筋上腕三頭筋上腕三頭筋

出典:プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第2版 坂井建雄 医学書院

上腕の後ろ側を占めていて、その全長すべてを覆う大きな筋肉です。

前述の上腕二頭筋や上腕筋の拮抗筋です。

長頭、外側頭、内側頭の3頭を有し、これら3つが合流して尺骨の肘頭に停止します。

長頭腱は肩甲骨の関節下結節、外側頭腱は上腕骨体外側面、内側頭腱は上腕骨体後面から起始します。

支配神経は橈骨神経です。橈骨神経は上腕三頭筋の深部を走行します。

肘伸展動作に負荷を掛ければ、この筋は鍛えられますが、長頭のみ肩甲上腕関節(肩関節)をまたいで肩甲骨に付着しているので、バンザイの姿勢で肘を曲げ伸ばししないと刺激がうまく届きません。

また構造上3つの筋頭が1つの腱に集約されるため、ストレッチ負荷が掛かるようなトレーニング種目だと1点集中で強い負荷が掛かり、腱の付着部や腱自体を傷めやすいです。

上腕三頭筋のトレーニングに関しては特に念入りなウォームアップを行いましょう。

冒頭でも記しましたが、サイズが大きいため、男性で腕をたくましくしたいと考えるなら、上腕三頭筋のトレーニングは必須です。

女性の場合は上腕部の引き締めに有効です。男性のように簡単に太くなりませんので、積極的に鍛えましょう。

肘筋

肘筋

出典:プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第2版 坂井建雄 医学書院

上腕三頭筋から分かれた筋肉で、親戚のような関係です。

働きは弱いですが、上腕三頭筋を補助しています。

小さな三角形をしています。

上腕骨外側上顆から起始し、尺骨上部後面に停止します。

支配神経は橈骨神経です。

上腕三頭筋を鍛えるエクササイズで一緒に鍛えられます。

前腕を回旋する筋肉

専門的には、肘関節の回内、回外または前腕の回内、回外といいます。

これらに関与する筋肉は……

  • 肘関節(前腕)を内側に回旋(回内)する筋肉:円回内筋、方形回内筋
  • 肘関節(前腕)を外側に回旋(回外)する筋肉:回外筋、上腕二頭筋

になります。

上腕二頭筋の解説は前項参照

円回内筋方形回内筋回外筋

出典:プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第2版 坂井建雄 医学書院

円回内筋

円回内筋

出典:プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第2版 坂井建雄 医学書院

意外にも二頭筋です。

上腕頭尺骨頭の2つが存在し、その間を正中神経が通過します。

上腕頭の起始は上腕骨内側上顆、尺骨頭の起始は鈎状突起(尺骨)で、両頭が合流し橈骨の回内筋粗面に停止します。

支配神経は正中神経です。

橈骨体の外側(回内筋粗面)に付着するため、強い回内作用は当然のこと、肘関節の屈曲でも補助的に働きます。

テニス肘(フォアハンドテニス肘)、ゴルフ肘、野球肘とも密接な関係のある筋肉です。

また日常生活動作(ドアノブを回す、ドライバーを回す、拭き掃除など)でも多用する筋肉です。

とても疲労がたまりやすく、起始部である上腕骨内側上顆に痛みが出やすいです。しっかりメンテナンスすることが大切です。

方形回内筋

方形回内筋

出典:プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第2版 坂井建雄 医学書院

前腕の下端に存在する扁平な方形な筋肉です。

方形とは四角形を意味します。

起始は尺骨下部前面、停止は橈骨下部前面になります。

支配神経は正中神経です。

肘関節から遠い場所に位置するため、肘関節の解剖学というテーマにおいては除外すべき筋肉ですが、肘関節(前腕)の回内と考えた場合、メインの筋肉になるので載せました。

通常の回内動作ではこの方形回内筋が働き、より強い回内においては前述の円回内筋が働きます。

肘関節の回内動作

出典:解剖学 改訂第2版 全国柔道整復学校協会監修 医歯薬出版株式会社

回外筋

回外筋

出典:プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第2版 坂井建雄 医学書院

上腕骨(上腕骨外側上顆)尺骨(尺骨回外筋稜)から起始していて、橈骨の上部を経由して外側に出て橈骨上部外側面に停止します。

支配神経は橈骨神経です。

前腕の回外運動を行いますが、より強い回外運動をするためには上腕二頭筋との協力が必要です。

前腕の回外運動

出典:解剖学 改訂第2版 全国柔道整復学校協会監修 医歯薬出版株式会社

さいごに

この記事を簡単にまとめます。

  • 肘は痛めやすい
  • 肘は上腕部と前腕部の移行部
  • 肘を構成する骨は3本
  • 肘の関節は3つ
  • 肘の運動は屈伸と回旋
  • 上腕二頭筋と上腕三頭筋はデリケートな筋肉

腕のトレーニングは男性女性問わず人気です。

人気ゆえに肘を壊してしまう人も多いのが悲しい……

基本を押さえることで未然にケガや障害を防ぐことができ、それぞれの骨や筋肉の特性、機能を存分に発揮してトレーニングがができます。

肘の構造、機能をしっかり理解していただき、安全で健康的に腕トレに励んでいただきたいと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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ABOUT ME
相馬達也
相馬達也
「ウエイトトレーニングと鍼灸マッサージで日本を元気に!」を天に与えられた使命として日々試行錯誤しているパーソナルトレーナーです。1児の父でもあります。身体のことならお任せください。
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