パーソナルトレーナーとして筋肉には人一倍気を使っていましたが、大胸筋断裂という大ケガを負ってしまった当ブログ管理者の相馬です。
この記事では、自身の経験から読者の皆様に少しでもお役に立てるように、筋断裂(肉離れ)の治療方法について記してみたいと思います。
目次
大胸筋断裂をしてしまった経緯
2018年8月の末に、家族でデイキャンプに行きました。
そのキャンプ場は、簡単な沢登りができるのが売りです。
ライトな沢登りだからと、沢登りに適していないウォーターシューズにサーフトランクスという自然を完全に舐めた装いで沢登りを開始しました。
当時3歳の息子と一緒にテクテク進みます。
で、大胸筋断裂ポイントに到着です。
赤い丸で囲ったところです。
小さい滝の横にロープが張られていて、そこをつたって登るスタイルです。
拡大してみます。
画像が荒いですが、こんな感じ。
いつもの自分であれば、ヒョイヒョイと登ってしまうようなレベルの斜面です。
しかし今回は3歳の息子付きでしたので、少し登りにくい。
息子を片手に抱っこして、いつも以上に慎重に登りました。
登ってから、さらに奥まで進むと大きな滝がありました。
こんな立派な滝です。
このときは、この後悲劇が起きることなどつゆ知らず、自然の優美さ偉大さを十分に堪能していました。
滝を鑑賞したり、時に打たれてみたりと楽しんだ後、また来た道を戻り始めます。
そして、先ほどの小滝ポイントに着き、その悲劇が起きました。
再度息子を片手に抱き、ロープをもう一方の手で操作しながら下る時でした。
沢登り専用靴ではなかったため、濡れた岩場に足をとられ、ツルんと滑ってしまったのです。
ロープと繋がっているのは左腕のみです。
息子は私と岩盤の間に挟まれそうです。
息子をなんとしてでも守るために、ロープに繋がる左腕を支点に身体を反転させた時でした。
身体の中で聞こえたのか、直接耳で聞こえたのかはわかりませんでしたが、ものすごい衝撃が腕の付け根に走りました。
そこからは、腕が上がらず、左の三角筋前部から大胸筋にかけてパンパンに腫れあがります。
ベンチプレスで追い込みまくっても、こんなにはパンプアップしないくらいにパンパンです。(ちなみに3歳の息子は無事でした……)
その日の夜には内出血が見られました。
私の左腕
ひたすらアイシングと圧迫を繰り返しました。
痛みも半端なかった……。
画像を見てお分かりの通り、大胸筋が腕に付く丁度付け根の部分が切れ、その部位の出血が重力で腕に下がっているのが見て取れます。
内出血痕のところにまったく痛みはありません。
肉離れ・筋断裂を解説
肉離れの医学的な正式名称は、【筋挫傷(きんざしょう)】といいます。
さらに厳密にいうと、部分的な筋線維や筋膜の断裂を指します。
完全な筋肉の断裂は【筋断裂】という名称に変わるようですが、これらをひっくるめて世間一般的には【肉離れ】と呼ぶことが多いようです。
原因
最も多い受傷のシーンは運動中です。
そのなかでも競技レベルで行う運動などに多く見られます。
いいかえれば、本気(全力)で身体を動かすシーンです。
急激な動きが多い時が危険であるということです。
競技中は筋肉が急激に伸縮しますので、筋肉側がその動きに対して準備ができていないと、切れてしまうんです。
ウォームアップがいかに大切かがわかりますよね。
競技レベルや高強度の運動を行うときは、急に体を動かすのではなく、運動器、呼吸器、精神面まで、徐々に本番モードにしていきましょう。
ウォームアップだけでなく、普段から疲労を溜めないようにすることも予防策です。
筋の収縮に関わる栄養の問題や、疲労物質の除去がキーポイントです。
ここが管理できていないと筋肉が硬くなります。
また高強度の動作に耐えれるように筋力を高めておくことも大切です。
簡単にまとめると……
- 強い
- 柔らかい
- しなやか
な筋肉を維持することです。
これだけを維持していても、私のようにアクシデントで無理やり筋肉が引っ張らるような負荷が掛かると、断裂してしまいますが……。
それでも上記のことを意識するだけで、かなり肉離れを防ぐことができます。
ちなみに肉離れの瞬間は、筋が切れたときの音がします。
私も大胸筋断裂した瞬間に聞こえました。あの音はほんと不快です……。
肉離れのしやすい筋肉
筋肉であれば、どの部位でも急激な負荷が掛かると肉離れします。
そのなかでも、ダッシュやジャンプなどの急激な動作を強いられやすい太ももの裏側やふくらはぎは肉離れしやすいといわれています。
私のように大胸筋も割とよくあるようです。
高重量のベンチプレスの時は特に気をつけましょう。
またスポーツでも起こります。
有名な選手ですと、大相撲の稀勢の里、柔道の井上康生が競技中に大胸筋断裂で負傷しています。
症状
腫れと痛みが主な症状です。
急性期は肉離れした筋肉を強く収縮させたり、伸ばしたりすると激痛です。
ちなみに肉離れの損傷にはレベルがあります(下図を参照)。
引用元:公益社団法人 日本整形外科学会
重篤な肉離れほど、その後に内出血を伴うこともあります。
また見た目にも筋肉が凹んだりします。
この画像は私の大胸筋の画像です。
受傷後8週間の写真ですが、まだ凹んでいます。
左の大胸筋の下部は切れたことで、少し下に落ちて、中央に寄りました。
元々左の大胸筋の方が大きいので、さらに左右差があるように見えます。
このレベルは基本手術でないと戻らないそうですが、保存療法でもなんとかなるレベルということで、手術は回避しました。
受傷直後よりは凹みは緩やかになりましたが、未だに腕立て伏せやベンチプレスを軽ーい負荷で行っても、何とも言えない突っ張りと痛みが走ります。
ベンチプレスは最大で150kg拳上できましたが、今は50kgでもおっかなびっくりです。
追記
1年以上経った現在も凹んだままなので、私レベルの肉離れは手術をしないと完治しないでしょう。
ベンチプレスは120㎏を5回挙げれるまでに回復しましたが、100㎏以上の負荷でトレーニングすると、翌日に突っ張り、少しだけ痛みが出ます。
ですので、普段の胸筋のトレーニングは軽い負荷(80~90㎏)で丁寧に動作するように心がけています。
硬くなりやすいので、ストレッチングも欠かせません。
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治療法
ずばり安静と固定です。
筋肉系のケガはこれが一番です。
損傷した筋肉をとにかく動かさないことです。
急性期の場合はこれに加えて圧迫とアイシング、拳上を行います。
RICE処置といいます。どの外傷も初動対応は同じですね。
急性期を過ぎると、少し動けるようになるので、ここで油断してしまうひとが多いのですが、まだこの段階は、プラモデルに例えると接着剤が乾いていない状態。
まだまだ傷口は不安定です。
傷口には筋肉と違う組織である線維組織が出来上がります。
瘢痕(はんこん)といいますが、非常にもろいです。
最低でも3週間は弾性バンテージなどで軽い固定をしましょう。
大胸筋専用のサポーターもあります。
私はこのような専用のサポーターを使い続けました。
痛みが軽減しますし、凹みも少し改善しマシになります。
何より不意な動作で再断裂してしまうことを防いでくれるのでおすすめです。
そして定期的に温熱を加え、患部を温めて回復を促進します。
固定のみでもかなり傷口に優しい対応になります。
トレーニングが習慣の人にとって3週間も動かせないことは死活問題ですが、この時期にしっかりと傷口を締めておくことで、瘢痕形成を最小限にとどめ、後遺症に悩まされることが大きく減少しますから、割り切って固定しましょう。
『肉離れは長期の固定』というイメージを忘れないようにしましょう。
筋力回復
固定と温熱療法を続け、ストレッチをしても痛みが出なくなったらトレーニングを始めましょう。
ポイントは物足りないくらいの負荷、物足りない回数でトレーニングを終えることです。
固定し続けた筋肉は、自分が感じているよりも弱っています。
とにかく焦らないことです。
最初はゴムチューブもダンベルもいらない、ただ動かすだけでも全然OKです。
少しづつ前進してきましょう。
筋への適度な負荷が引き金になって、同化作用が進み、さらに回復が促進します。
筋の合成が進むと硬くなっていた瘢痕組織がほぐれて、本来の筋組織になじんできますから地道にトレーニングしていきましょう。
自身のけがで感じたこと
骨折や脱臼などは、しっかり固定するイメージがあり、整形外科などでも処置をしてくれますが、肉離れに対しては整形外科の対応も、冷たいことが多いようです。
私も整形外科で、
『安静にするしかないよ。』
といわれ、
『湿布くらいしか出せないけどどうする??』
とそんな対応でした。
私のかかりつけの整形外科の質の問題かもしれませんが、本来は超音波検査、MRIなどを駆使して筋損傷の度合いをチェックくらいはすべきだと思いました。
このような肉離れに対するプロ(整形外科)の対応が、骨折や脱臼に比べ、一般人が肉離れを安易に考えてしまう一因にもなっていると感じます。
まあお医者さんは手術と薬物療法のプロですから、仕方がないといえばそれまでですが……。
もちろん素晴らしい整形外科医がいらっしゃるのは重々承知です。
それでも今回の件で、いろいろな意味で補完医療の大切さを痛感しました。
私はトレーニング指導者で鍼灸マッサージ師です。
外傷の専門ではないので、その一翼を担えないことが悔しいです。
最近はこのことがきっかけで、外傷の専門家である柔道整復師の免許を取得しようか本気で悩むようになりました。(学費が高く、妻がなかなか許してくれない……(´;ω;`))
私のような対応をされて困っている方はたくさんいる気がします。
次に断裂した部位に関してです。
治療法の項で同じ内容を前述していますが、もう一度あえてお伝えします。
これに尽きます。
私の場合は、大胸筋という部位の特性上、日常生活動作でどうしても動いてしまうため、何度かビリッっと激痛が走りました。(それからサポーターを装着するようにしました。)
おそらく、こういった痛みが走った時に軽い再断裂を繰り返していたと思われます。
肉離れは、とにかく筋肉を締めてあげて、傷を開かないこと。
少し痛みが引いたからと気を抜かないことです。
さいごに
自身の体験から肉離れについて簡単にまとめてみました。
肉離れは骨折や脱臼と比べると軽視されがちです。
同じくらい繊細に回復させるべきものです。
この記事で、肉離れや筋断裂で悩める方のお役に少しでもたてれば幸いです。
また肉離れ後の筋トレや予防のためのウエイトトレーニング指導は当方にお任せください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。