この記事では、物をつかむ力「握力」について書いていきます。
ヒトが日常生活を送る上で、全く指を使わないことはまずありませんが、指の動きと握力は密接に関係しています。
ということで、ADL(日常生活動作)と直結する握力の大切さを解説します。
目次
握力を産みだす筋肉について解説
冒頭で「握力は指の力が密接に関係している」とお伝えしましたが……
実は、指には筋肉がほぼありません。
指そのものを動かしている筋肉は、前腕(ぜんわん)という部位に集中しています。
出典:プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第2版 坂井建雄 医学書院
前腕エリアにある筋肉から連なる腱がそのまま指に入ってきます。
イメージは指にケーブルがあって、そのケーブルをたどると前腕の筋肉にたどりつくような感じです。
出典:プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第2版 坂井建雄 医学書院
前腕の筋肉が動くことで、遠い指先が動きますから、握力アップのためには前腕の筋肉を鍛えなくてはいけません。
前腕の筋肉の鍛え方
前腕の筋トレといえば、ポピュラーなのが手首を屈曲したり伸展したりするトレーニング。
こんな運動です。
リストカール、リストエクステンションといいます(これ以外にも手首のトレーニングはある)。
このような運動は前腕部の強化の基本動作になります。
ここで疑問が湧きます。
手首を動かす運動なので、握る動作と無関係に感じます。
それなのに、握力強化のためになぜ手首の動作を鍛えるのか?
その理由は、握る動作と手首を動かす動作を支配する運動神経は同じだから。
専門的な用語で神経促通とか神経筋促通なんていいます。
手首を簡単に動かせるようになると、手首を動かす・握るための運動神経(橈骨神経・正中神経・尺骨神経)が良く働くようになります。
細かく指を動かす動作よりもこのような粗大な手首の運動の方が動かしやすい分、神経回路の活性化にもってこいです(運動学習として行いやすい)。
ある程度動きが出せて、時間差で前腕の筋肉が肥大してくるまでは時間が掛かりますが、根気よくトレーニングすることが大切です。
リストにある程度の筋量と筋力が付いたら、今度はトレーニングの原理・原則のひとつ「特異性の原理」を意識して、握る動作そのものを鍛えていきます。
ここまでで神経回路はしっかり刺激されているので、いきなり握る動作を行うよりも、効率よくトレーニングできるでしょう。
手首の運動では働かなかった筋肉(虫様筋・短母指屈筋など)がたくさんあるので、握る動作で初めて働きます(上図参照)。
ハンドグリッパーなどでガンガン握る動作を強化しましょう。
注意点として、動作には必ず拮抗動作があります。いいかえれば拮抗する筋肉がありバランスをとっています。
腹筋の記事で船のマストで例えましたが、バランスを崩すと必ず身体に不調が出たり、上手く動作できなくなったりします。
握る動作を鍛えたら、上の写真のようなゴムバンドで指を開く動作も鍛えましょう。
3種類の握力について解説
前述で「握る動作を鍛えろ!!」とお伝えしましたが、さらに効率よく握力アップさせるためには握力を3つのタイプに分けて鍛える必要があります。
この3つのタイプの握力をそれぞれ鍛えていくことで、手の筋力がグンと高まります。
それでは3つの握力について解説します。
クラッシュ力
世間一般的にいわれる握力がこのクラッシュ力です。
体力測定なんかで握力計で測るあれです。握り込む握力です。
成人男性の平均値は45~50kg、成人女性が25~30kgといわれています。
クラッシュ力を高めるにはハンドグリッパーが一番のトレーニングになります。MRGではキャプテンオブクラッシュというブランドのハンドグリッパーをお勧めしています。
ローレット加工が丁寧に施されていて、滑りにくくなっています。
レベルに応じてさまざまな種類がラインナップされています。
なにより握力トレーニング器具のトップブランドなので品質が良く所有欲を満たせます。
ピンチ力
ピンチ力は、つまむ動作のことです。
これも立派な握力のひとつです。
上のイラストのように、お腹のお肉をつまむのもピンチ力です。
スポーツにおいては、野球でボールを投げる時、柔道で道着を掴む際の最初の引き付け動作など、いろいろな局面でピンチ力は使われます。
ピンチ力を鍛えるにはこんなトレーニンググッズをお勧めします。
前述したクラッシュ力を鍛えるキャプテンオブクラッシュシリーズのピンチ力養成用トレーニング器具です。
ホールド力
握ったものを離さないようにこらえる力をホールド力といいます。
日本語で「把持力(はじりょく)」ともいいます。
上の画像のようにバーベルを掴むデッドリフトというトレーニングは、非常に重たいバーベルを床から持ち上げる動作です。
握る力をキープしないとバーベルが落ちてしまいます。
ただこのデッドリフトというトレーニング種目。どんな種目よりも重い重量を使ってトレーニングできます。
男性ならそれなりに鍛えていれば、150kgくらいは挙げれるようになります。
単純計算で150kgをホールドするなら左右75kgづつを受け持たなければいけません。
しかし150kg程度のデッドリフトがMAX重量レベルの人で、75kgの握力を持つ人はなかなかいません。
であるのに、どうして把持できるか。
筋肉は、引き伸ばされようとしたときに伸ばされまいとする力発揮ができます。
専門的にエキセントリック収縮とか遠心性収縮と呼ぶのですが、この力が粘り強く働いているといわれています。
ホールド力が上がると、ウエイトトレーニングにおいては、グリップの抜けが無くなり、力強いトレーニングが可能になります。その結果、本来のターゲットの筋肉にしっかり刺激を送ることができます。
ホールド力を鍛えるには、重たいダンベルを長時間持って耐えるとか鉄棒に長時間ぶら下がるなどがおすすめです。
日常生活における握力の必要性
握力はリハビリテーションの分野では……
全身筋力の指標
といわれます。
上肢だけに関係がありそうですが、他の部位の筋力に大きな影響を及ぼします。
ロコモやサルコペニア(加齢に伴う筋量低下)を防ぐ意味でも握力の維持増強は大切です。
握力のピークは男性では35~40歳くらい、女性で40~45歳くらいといわれます。
ここから加齢とともに緩やかに低下していきます。
ピークまでにどれだけ高められるかも重要ですし、鍛えてこなかった方もトレーニングをはじめるのが早ければ早いほど良いです。
日常生活動作では、雑巾を絞る、ドアノブを回す、ドライバーを回す、料理など様々な場面で握力は重要になりますから、握力強化を習慣にしましょう。
全身を鍛え上げるウエイトトレーニングに対して抵抗があったり、やってみたいけど敷居が高く感じる方にも、まずは手軽に始められる握力トレーニングはオススメです。
さいごに
握力の鍛え方をまとめます。
- まず手首の動作を鍛える
- 次に握力全般を鍛える
- 握力には3つの種類がある
- クラッシュ力・ピンチ力・ホールド力をバランス良く鍛える
- 日常生活動作に直結するので、トレーニングしない人にもオススメの筋トレ
一説には、心筋梗塞や脳卒中などの死亡リスクの高い疾患の発症率とも関連があるそうです。
鍛えない手はありません。
上記を参考にしていただき、是非握力筋トレを試してみて下さい。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。