トレーニングと栄養戦略は、身体作りにおいて非常に大切な両輪です。
どちらかが疎かになると、結果が出にくくなります。
トレーニングをする人は栄養に関する最低限の知識を持っておくと、トレーニングの効率もアップしていくと思いますので、NSCAパーソナルトレーナーの基礎知識第2版を参考に、この記事ではエネルギー必要量や食事の基本的なことをメインにお伝えします。
目次
栄養の専門知識について
栄養の知識は複雑です。
我々パーソナルトレーナーでもあくまでスポーツ栄養学の一部分しかわかっていないことが多いですし、その部分を少し勉強する程度です。(NSCA認定パーソナルトレーナーに限ってのお話です。他の資格についてはわかりません。)
健常者であれば、パーソナルトレーナーの栄養評価・助言または自分自身で勉強した正しい知識を、健康管理に用いるのには問題ありません。
しかし、専門の栄養知識を必要とする以下のような疾病疾患がある場合は、自分自身の知識やパーソナルトレーナーの専門知識だけでは、対応ができずにその範疇を超えているので、必ず医師や管理栄養士、栄養士に助言を求めましょう。
栄養の影響を受ける疾病疾患
- 糖尿病
- 心疾患
- 消化器疾患
- 摂食障害
- 骨粗鬆症
- 脂質異常症(高脂血症)
まず、現在の食習慣を評価する
食習慣を適正に評価するために、代表的な3つの方法があります。
- 24時間思い出し法
前日の24時間に食べた物を、可能な限り思い出して記録します。
- 食事歴法
好き嫌い・食事時間・既往歴・体重変化などをカテゴリー別に書き出して、食習慣を分析します。
- 記録法
摂取した全ての飲食物(食品、飲料、サプリメント)を3日間にわたり記録します。
1番確実なのは記録法です。
しかしながら」、確実ではあるけれども、記録法は自分自身の栄養管理でもパーソナルトレーニング指導においてもあまり使いません。
なぜなら、未来の話だからです。
いざ体重管理しようと決心してからの記録となると、見栄を張ってしまうのか多くの人が普段のありのままの食事よりも減らしてしまうためです。
特にパーソナルトレーナーへ記録結果を提出となると、これが顕著です。
これから摂る食事(未来の食事)はこういった心理が働いてコントロールされてしまうのです。
よって記録法は、本当に食事管理を行い、真摯に体重管理と向き合うことのできる意識の高い人向きです。
ということで……
24時間思い出し法か食事歴法が動機づけが弱い段階においては有効です。
なぜなら、これらの方法は過去の食事記録を参考にするため、すでに摂取したものはコントロールできないからです。
ただし、パーソナルトレーナーは実際の食事を見ていませんから、申告の際はありのままに話してもらう事が大切です。
モチベーションが最初から高かったり、徐々に意識が高くなってきてから、記録法を使うと良いと思います(本気でトレーニング・減量や増量に取り組みだすと、嘘をついても仕方ないことに気づき、自分自身と真正面から向き合うようになる為)。
食習慣を理想へと近づける
食の評価ができたら現状の食習慣を理想とされる食習慣へと変えていくことが大切です。
まず、バランスを整えることから始めましょう。
我が日本国では、厚生労働省、農林水産省のホームページにある食事バランスガイドを参考にすると良いです。
ちなみにアメリカ合衆国では、米国農務省が作成したマイプレートを使います。
引用:農林水産省
どちらも、食べ物を栄養素別にカテゴリー分けし、どの食品群をどれくらい摂るかを視覚的に示しています。
各食品群は……
- 主食(穀類)
- 主菜(タンパク質)
- 副菜(野菜)
- 果物
- 乳製品
となっています。
現在の食習慣と比べて、何が摂り過ぎで、何が不足しているかを確認してみて下さい。これを整えていくと、重要な栄養素がバランスよく摂取できるようになっています。
ポイントは……
- 野菜、果物を増やす
- 大盛りを避ける
- 低脂肪や無脂肪の乳製品を使う
- 糖分の多い飲み物を避け、水に替える。
- ケーキ、クッキー、菓子パン、ドーナツ、チーズ、アイスクリーム、ベーコンやソーセージなどの加工肉などは必要以上に摂らないようにする。(固形脂質(常温で固形の脂)が多いため。)
エネルギー消費の影響因子
まずエネルギーとはなんぞや?です。
エネルギーはキロカロリー(kcal)で測定します。
1kcal=1kgの水の温度を1℃上昇させるのに必要なエネルギー
この基本を覚えましょう。
ここから以下の3つを影響因子としておさえて、エネルギーの必要量を推定していきます。
安静時代謝率
総エネルギー全体量のなかで最も大きな割合を占めています。(60~75%)
呼吸、心機能、体温調節などの正常な身体機能を維持するために必要なカロリー量です。有名な「基礎代謝量」とくらべると、約1.2倍といわれています。
基礎代謝量は、安静時代謝率に身体的・精神的ストレスを掛けない、環境温度20℃、絶食10時間後などの条件が加わる為、測定は難しいとされる。
身体活動レベル
この数値は最も変動が大きくなります。身体活動の内容によって、強度、継続時間、頻度が違うためです。
環境温度によってもエネルギー必要量が変わる為、1週間スパンくらいで身体活動を記録しないと、活動レベルを決定できません。
例えば、定期的なトレーニングをこなしていても、普段の生活スタイルはデスクワークや座ったままの余暇活動が中心ならば、その人の身体活動レベルは低いとなります。
食事誘発性熱産生(特異動的作用)
食後数時間にわたってエネルギー消費量が安静時代謝率以上に増加する現象です。
食べ物を摂取することによって消化や吸収の機能が亢進するので、よりエネルギーを使うわけです。
このエネルギー量は全体の7~10%を占めます。
ただここで注意がひとつ。
「じゃあ食事すれば、エネルギーいっぱい使うから痩せられるんじゃないの?だったらたくさん食べちゃお~」
と考えてしまうんですが……
ここに落とし穴があります。それは……
ということです。
ちなみにそのエネルギー量は
炭水化物(糖質)で……
摂取エネルギーの約6%、
脂質で……
摂取エネルギーの約4%、
タンパク質で……
なんとなんと、
摂取エネルギーの約30%!!
です。
ということで、タンパク質が圧倒的に代謝過程でエネルギーを必要とすることがわかります。
ドカドカと糖分や炭水化物、脂質を大量に摂取していると、そのほとんどがエネルギー消費されずに身体に蓄えられるのがわかりますね。
逆にタンパク質は多めに摂取してもあまり太らないことがわかります。
とはいっても夜の方が食事誘発性熱産生は低くなるので、遅い食事は控えめにすることも大切なポイントととして押さえておきましょう。
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エネルギー必要量の推定
エネルギー消費に関する影響因子を列挙してきましたが、それでも個々人のエネルギー必要量を推定するのは大変難しいです。そのために簡易的な方法が使われます。
まず最初は、長期間(2週間~1か月)において、体重の変動がない人向けの方法です。この条件に合致する人がいつもの食事スタイルのまま、3日間食事内容を記録する方法です。
体重の変動がないということは、摂取カロリーと消費カロリーが同じであることを意味するので、そのまま摂取エネルギー量が現在の体格を維持するためのエネルギー必要量となります。
減量する場合、まず運動量を増やしてみて、これでも落ちなければ、このカロリー量を目安に食事量を少しづつ減らしていきます。
次にほとんどの人に使える簡易的な計算式があります。ただしこの計算式はあくまでも概算なので、微調整は必要になってきます。
身体活動レベルを大まかに3段階に分けて、体重1kgあたりの必要なkcal量に実際の体重を掛けた数値です。
下にその図を載せておきます。この計算結果によって出た数値で今の体型が維持できていればカロリー必要量が合っていますが、冒頭でも触れたように、概算なので実際は増減します。
身体活動レベルによる男女の1日当たりの推定カロリー必要量表↓
身体活動レベル 男性 女性 軽い 38kcal/kg 35kcal/kg 中程度 41kcal/kg 37kcal/kg 激しい 50kcal/kg 44kcal/kg 軽い活動レベル:平坦な道を時速4~4.8kmで歩く。デスクワーク、子供の世話、家事、ゴルフ、卓球など。
中程度活動レベル:時速5.6~6.4kmで歩く。野良仕事、荷物運び、サイクリング、スキー、テニス、ダンスなど。
激しい活動レベル:荷物を持って登り坂歩く、バスケットボール、アメリカンフットボール、サッカーなど。
引用:森谷敏夫 岡田純一 第2版 NSCAパーソナルトレーナーのための基礎知識
(例)上図を参照に、体重70kgの男性で身体活動レベルが激しい場合……
70kg×50kcal/kg=3500kcal
となります。
もう一つ、WHO(世界保健機関)が考案した数式があるんですが、計算が面倒であり、細かい数値を使うので簡易的とはいえません。実生活や指導現場では使いずらいです。ここでは割愛します。
さいごに
「エネルギーとは何なのか?」が少しお分かり頂けたかと思います。
これを踏まえて、自分自身のおおまかなエネルギー必要量を把握して、食事をしていくことが大切です。
増量して身体を大きくしたいのか、減量してシェイプアップしたいのか、現状維持でいいのか?など、その目的に応じてエネルギー必要量の算定はとても大切です。
その日によって活動レベルも違うので、日ごとに計算して、食事量を決めることで体型を維持することができます。
トレーニングを行うなら、運動だけでなく食事管理も意識してみましょう。
次回は食事の中身である三大栄養素についての記事をアップしてみたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。