この記事のテーマは……
競技スポーツをしている選手に、なぜウエイトトレーニングが必要なのか?
ということについてです。
当方でも、パーソナルトレーニング指導依頼目的で上位に来るのが、
「今実践しているスポーツを上手くしたいので、トレーニングをしたい!!」
というものです。
ウエイトトレーニングを始める動機として、そう考えることはある意味正解でもあり、不正解でもあります。
それでは掘り下げていきましょう。
目次
ウエイトトレーニングで特定のスポーツが上手くなることはあるのか?
「ベンチプレスをすれば、パンチが強くなる!」
「スクワットをすれば、脚が速くなる!」
ほとんどの人はそう思ってウエイトトレーニングしています。
でも、それだけでは思ったほどスポーツ動作(パンチが強くなるとか脚が速くなるとか)に対して良い結果が出ないことが多いです。(ウエイトトレだけで変わる人もいます。)
しかし、パンチを打つにしても、走るにしても、ベンチプレスやスクワットで鍛える対象となる筋肉とほぼ同じ筋肉を使います。
筋肉に、走る用の筋肉、スクワット用の筋肉なんてありません。ヒトとして生まれた以上同じ筋肉を使って動作します。
じゃあなぜウエイトトレーニングで強く太くしっかりとした筋肉を作ったのに、なかなかスポーツ動作にその効果が現れないのか。
その答えは……
運動における特異性の原理
にあります。
スクワットで重いものを挙げられるようになるのは、スクワットが強くなっただけであり、脚が速くなったわけではないということです。
特異性というのは……
ある特定の効果を出すには、それを引き出せる特定の方法を使わなければいけない
ということです。
結論!
ということになります。
それでもウエイトトレーニングを行う理由
まずこれを念頭に置いてください。
スポーツは偏った動きをし続けるものである
ということ。
テニスであれば、ラケットを持つ利き腕を酷使するため、左右の筋力バランスが崩れます。
乗馬であれば、同じ姿勢をキープし続けるため、各関節の可動範囲がかなり狭い運動を繰り返すことになります。
このようにスポーツは、決まった範囲や方向のみで動かしたり、筋力発揮も特定の部位に偏ることが多いため、身体が硬くなりやすく、筋力もアンバランスになります。
アンバランスで柔軟性の欠いた身体では、スポーツはもちろんのこと、日常生活動作を続けていると怪我や痛みを誘発します。
ということで、
スポーツ選手がウエイトトレーニングをやらなければならない最大の理由は……
怪我や慢性的な痛みの予防
のためなのです!!
偏った動きばかりをするスポーツ選手は、その競技で使わない部位を鍛え、その競技で行わない動作を行い、ヒトとして正しい動作が行える身体を、ウエイトトレーニングによってキープしています。
冒頭で、
という考えは正解でもあり不正解でもあると記しましたが、バランスの良い身体を手に入れられると、身体がより効率的に動くので、力の伝達が上手くいってパワーアップしたり、軸のブレが減少したりと、結果的にスポーツ技術の向上につながっていきます。
怪我や痛みを予防できれば、練習もたくさんできますし、不快な症状による精神的な負担も減るため、高いモチベーション維持にも役立ちます。
ウエイトトレーニングは、スポーツ競技をする上での【ベース】
という位置づけで取り組みましょう。
ウエイトトレーニングを行うもう一つの理由
今度はこれを念頭に置いて下さい。
競技の動作だけでは、現状以上の筋力アップやうまく使えていない筋肉を効率的に鍛えられない。
例えば、腕が高く挙げられない、ジャンプが高く跳べないなど、競技動作を何度も練習しているのにもかかわらず問題が生じている場合は、その動作に必要な筋肉を鍛える=神経信号の感度を上げることが大切です。
競技をやり込んで技術練習を重ねてもうまく動かせないわけですから、現状の身体のままで何度練習しても、多少は向上することはあったとしても、動作改善をするには、効率はかなり悪くなります。
その動作に必要な筋肉の成長と神経信号の伝達効率を上げることが、動作改善のキーになると記しましたが、最も効率よくその両方を高められるのが、ウエイトトレーニングです。
なぜウエイトトレーニングが良いのかというと……
ウエイトトレーニングは動作スピードからフォームまで徹底的なコントロール下にあります。
逆にスポーツは突発的な動きが多く、仮にウエイトを使って特定のスポーツ動作でその動作を鍛えようとした場合、関節に負担が掛かることは容易に想像ができます。
例えば野球のピッチャーが球を速くしよう鉄球で投球練習をしたらどうでしょうか??
サッカー選手が鉄下駄を履いて、スプリント練習したらどうでしょうか??
考えるだけで怖いですね~。
ウエイトトレーニングの動作はヒトの基礎動作を元に組み立てられています(立ち上がる、しゃがむ、押す、引く、挙げる、降ろすなど)。
安全で効率の良い動作なので、重い負荷を掛けて狙った筋肉に刺激をあたえることができます。
また動作可動域も広いため、重い負荷による筋肉の伸縮を利用でき、動的な柔軟性も向上します。
これらの恩恵で、神経信号の促通効果が高まり、筋肉を自在に硬くしたり緩めたりできるようになります(ボディビルダーの大胸筋ピクピクなんかがいい例です)。
以上を踏まえると、ウエイトトレーニングは身体を作るには効率が良く、その動作に必要なところの筋肉をそれぞれの種目(スクワット、ベンチプレスなど)によってダイレクトに成長させられることが最大のメリットということになります。
ウエイトトレーニングの効果をスポーツ動作向上につなげるには??
冒頭で、
と記しました。
それでもウエイトトレーニングを行わなければならない理由も併せて記しました。
「ん??でも、スポーツ動作は上手くならないんでしょう?」
「動作向上は出来ないって言ってたじゃん!」
となりますよね~。
ウエイトトレーニングの結果、筋肉のバランスも整えました、必要なところにしっかり筋肉と柔軟性もつけました、ヒトの基礎動作を高負荷を掛けてもできるようになりました、おまけに見た目も向上しました。
これだけでも十分健康なヒトへと生まれ変わっていますが……(一般人はここまでで十分です!!)
競技アスリートはこの状態から、たくさん競技練習をすることで、競技力が向上していきます。
要は基本的な体力要素をしっかりと準備した状態で、競技の技術練習に臨むことで、トレーニング効果が現れてくるわけです。
特にその競技のオフシーズンなどに、基礎的な体力要素(筋力、瞬発力、柔軟性など)をウエイトトレーニングでしっかりと高めて、シーズンに近づくにつれて、競技自体の技術練習を増やしていくといいでしょう。
趣味レベルでスポーツを行っている方も、そのスポーツと並行してウエイトトレーニングをしていくことが大切です。
さいごに
ウエイトトレーニングは一朝一夕で簡単に効果が出るものでない為、身体の変化感じるまでには少し時間が掛かります。
ましてや競技スポーツへのトレーニング効果の転化までを考慮すると、結構な時間が掛かるかもしれません。
しかしそれでも、ここまで述べさせていただいた理由から、最も筋力向上効率が良いのがウエイトトレーニングですし、確実に身体の変化を実感できるのもウエイトトレーニングです。
とにかくコツコツと続けていくことが大切です。
ウエイトトレーニングに限らず、競技スポーツに対する補強トレーニングの種類は、必要な体力要素によって様々な様式があります。
この辺まで説明してしまうと記事が長くなりますので今回は割愛しますが、どんな様式の補強トレーニングをするにしても、その基本はベーシックなウエイトトレーニングに詰まっていますので、まずはしっかりとウエイトトレーニングを行うことをお勧めします。
MRGでも基本のウエイトトレーニングを重点的に指導していますので、トレーニングのことがよくわからないアスリートの方は、是非ご相談ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。