解剖学

【肩の解剖学・運動学】筋トレで肩を壊さないために構造を理解しよう

肩の解剖学

トレーニング指導・施術をさせて頂いていると、非常に多い肩周囲の不調。

腰から下肢にかけては扱いが得意でも、意外に肩周囲の扱いが苦手なパーソナルトレーナーさんはいませんか?

私の感覚ですが、駆け出しの頃は、特に肩周囲には苦手意識がありました。

ということで今回は自身の復習も兼ねて、そんな肩回りの解剖学や運動学についてまとめてみました。

肩周囲の解剖

なんとなくはわかっていたけど、しっかりとイメージするのが大変。

それほど、骨の数は多くありませんが、肩甲骨や鎖骨、上腕骨の角度なんかは触診する際にも特に重要です。

それぞれの骨の形も、解剖図を見なくても絵に描けるくらい頭にインプットしたいところですね。

解剖図は下記をご覧ください。

出典:プロメテウス 解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第2版 坂井建雄

形状はシンプルなだけに、肩甲骨の烏口突起とか、上腕骨の大結節・小結節とかメジャーどころは押さえておきたいですね。

狭い意味での肩関節

肩関節というと思い浮かべるのが……

この部分ですね。

出典:プロメテウス 解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第2版 坂井建雄

肩甲上腕関節(けんこうじょうわんかんせつ)といいます。

これは狭い意味での肩関節です。

ゴルフボールとピン

文字通り肩甲骨と上腕骨の連結ですが、関節の形状を見て頂くと、上腕骨側がボール状で、肩甲骨側が凹状になっています。ちょうどゴルフのピンとボールの関係に似ています。

この形状のお陰で3軸(屈曲・伸展、外転・内転、外旋・内旋)で自由に動かすことができるんです。

逆に言うと良く動く分不安定でもあります。

その不安定さを緩和させるために関節唇(かんせつしん)という硬い軟骨組織が肩甲骨側に付いて、肩甲骨側の凹を深くしています。

出典:プロメテウス 解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第2版 坂井建雄

赤で矢印を引いたところが関節唇です。

このなかで上腕骨のボール君が動きまくるわけですから、正しい動きをさせないと、肩甲骨の受け皿から上腕骨のボールが外れてしまい関節唇に負担が掛かるのはなんとなく想像できますね?

いいかえれば、この受け皿の中心で、ボールを常に動かすことが、痛めることなく肩本来のポテンシャルを安定的に発揮できるんです。

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本来の肩関節

ここまで、狭い意味での肩関節「肩甲上腕関節」について説明しました。

ここからは本来の肩関節である肩関節複合体についてです。

肩関節複合体

複数の関節で形成されます。

肩関節複合体の関節たちは……

  1. 肩甲上腕関節
  2. 肩甲胸郭関節
  3. 胸鎖関節
  4. 肩鎖関節

です。

狭義の肩関節に比べて、いっきに4つの関節になりました。

肩は肩甲上腕関節のみであれだけの自由な可動域は出せません。

厳密に言うと、肩の動きには胸椎や頸椎、肋骨、肘など全て関わりますが、メインはこの肩関節複合体であることを覚えましょう。

この4つの関節が協調してはじめて肩は滑らかに動きます。

各関節の解剖図を見ておきましょう。

出典:プロメテウス 解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第2版 坂井建雄

肩甲上腕関節

前述でも軽く触れていますが、形態的にいうとゴルフボールとピンの関係です。

このような形を球関節といいます。

上腕骨側はボール状で、肩甲骨側は受け皿状になっています。

受け皿といっても、ボールの大きさに対するとかなり小さいため、不安定な関節です。

そういった代償が大きな可動性に繋がります。

関節を安定させるために、関節唇回旋筋腱板(ローテーターカフ)関節包を形成する靭帯がその役割を担います。

出典:プロメテウス 解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第2版 坂井建雄

上記の図を見て頂くと、小さな関節面を中心に筋肉(ローテーターカフ)や靭帯、関節唇でカップ状の形を作り上げて、関節面の狭さを補っているのがわかります。

肩甲胸郭関節

機能学的な関節で、実際は本当の関節(関節包や滑膜などの構造がある関節)ではありません。部位は肋骨(胸郭)と肩甲骨が接しているところです。

この肩甲胸郭関節が滑らかに動くと肩の動きは大きくなります。肩甲骨は胸郭の上を滑るように動くのですが、まずその胸郭を見てみましょう。下図をご覧ください。

出典:解剖学 改訂第2版 医歯薬出版株式会社

これが胸郭です。肩甲骨は主に胸郭の後面を滑走します。

ですので胸椎が丸まって硬くなると、胸郭も弯曲が大きくなるので、肩甲骨は走りにくくなります。

路面が悪いと車が走りにくくなるのと同じです。

この肩甲骨の滑走と上腕の動きを合わせたものを「肩甲上腕リズム」といいます。

胸鎖関節

胸鎖関節は、鎖骨と胸骨をつなぐ関節で、肩関節複合体の中で体幹に接続する唯一の関節です。

鞍関節(あんかんせつ)という形で自由な可動性を持っています。

また関節内には関節円板があるので、よりスムーズな動きを実現しています。

関節円板は膝の半月板が丸くなったようなイメージです。

肩甲骨の拳上や下制、内転や外転、上方回旋や下方回旋など全ての動きの起点になります。

また、この関節に腕、鎖骨、肩甲骨の重みがのしかかる為、安定性も必要になります。

胸鎖乳突筋や鎖骨下筋、大胸筋などの筋性による補強と、各種靭帯(鎖骨間靭帯、後胸鎖靭帯、前胸鎖靭帯、肋鎖靭帯)による靭帯性の補強のダブル補強で安定性を確保しています。

出典:プロメテウス 解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第2版 坂井建雄

肩鎖関節

肩鎖関節は、鎖骨と肩甲骨をつなぐ関節です。

平面関節という形で、一応、関節円板も存在しますが、可動性は低いです。

また強力な肩鎖靭帯で補強されているので安定性は高いです。

しかし、簡単に触診できる部位(むき出し)でもあるので、コンタクトスポーツなどで損傷しやすいところでもあります。

この関節は、肩甲骨と直接関節しているので、肩甲骨の動きにとってかなり重要な関節です。

もし鎖骨と肩甲骨が一体化していたら、肩甲骨は胸鎖関節でしか動かせない為、肩の可動性は減り、滑らかに動かせなくなります。

可動性が少ないとはいえ、肩鎖関節が存在することで、関節の動きを微調整し滑らかにしてくれるのです。

肩甲骨の上方回旋、下方回旋、内旋、外旋、前傾、後傾には特に重要な関節です。

出典:プロメテウス 解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第2版 坂井建雄

烏口鎖骨靭帯

肩甲骨には烏口突起があります。

ここと鎖骨をつなぐ靭帯を烏口鎖骨靭帯(うこうさこつじんたい)といいます。

烏口鎖骨靭帯は……

円錐靭帯(えんすいじんたい)

菱形靭帯(りょうけいじんたい)

の総称です。

解剖図をご覧ください。

出典:プロメテウス 解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第2版 坂井建雄

この二つの靭帯は、前述の胸鎖関節、肩鎖関節の動作を制御する靭帯です。

鎖骨が動き過ぎて両関節(胸鎖関節、肩鎖関節)にダメージがいかなよう、完全に動きを止めるというよりも、上手に伸ばされながら付かず離れずの絶妙なかじ取りをしてくれる靭帯です。

また動作が無い時は、腕の重みを支えていますし、肩甲骨の角度を維持しています。

ここが硬くなると色々と問題が生じてくるのは、なんとなくイメージできますね?

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肩甲骨面(スキャプラプレーン)

肩甲骨面のことをスキャプラプレーンなんて呼んだりします。

まずは解剖図を見てみましょう。

出典:プロメテウス 解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第2版 坂井建雄

ご覧のように肩甲骨は前額面に対して30度傾斜しています。

肩甲骨の上腕骨との関節面(肩甲骨窩)はさらに5度内側を向いているので、関節面での傾斜は35度になります。

肩甲骨窩は水平ではなく、肩甲骨内側縁(内側)に対して5度上を向いています。

上腕骨の骨頭の軸は、骨幹に対して約15~20度後捻していますが、実際、関節になる面については前額面に対して30度のところです。

上記の角度で生理的に関節が適合する面を肩甲骨面(スキャプラプレーン)といいます。

この面で腕の動作をすれば、肩甲上腕関節は捻じれることなくスムーズに動きます。

回旋筋腱板(ローテーターカフ)

さきほども少しお話しましたが、1の肩甲上腕関節だけで肩関節を動かすとどうなるか?

ゴルフボールとピンの関係を思い出してください。

1の肩甲上腕関節だけが動いてしまうとゴルフボールだけが動くことになるのでピンから落ちます。

関節の中でこれが起きれば、あらゆるところに上腕骨頭(ボール)が衝突したり、場合によっては肩甲骨窩(ピン)から外れる(脱臼する)であろうことは想像できますね。

ボールが逸脱しないようにするためには、常に上腕骨頭(ボール)を肩甲骨窩(ピン)に引き付けておくことが大切です。

その役割を担うのが……

回旋筋腱板(ローテーターカフ)

といいます。

数年前に大流行りした「インナーマッスル」の代表格です。

このローテーターカフは……

  1. 棘上筋
  2. 棘下筋
  3. 小円筋
  4. 肩甲下筋

で構成されます。

下の図で確認しましょう。

1:棘上筋 2:棘下筋 3:小円筋

4:肩甲下筋

出典:プロメテウス 解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第2版 坂井建雄

上腕骨頭(ボール)を肩甲骨窩(ピン)に、あらゆる方向から引き付けているのがわかります。

これらの引き付けがしっかりと機能してはじめて、上腕骨頭(ボール)は安定して肩甲骨窩(ピン)の上で転がれます。

上記の解剖図のように腕が下がっているとき、4つの筋肉のなかで腕が落ちないように一番頑張っているのは、棘上筋(きょくじょうきん)です。

このように腕の位置によって、回旋筋腱板(ローテーターカフ)の筋力発揮のバランスは変わるのですが、すべての筋バランスがイコールになる最適の位置があります。この位置を……

ゼロポジション

といいます。

前述のスキャプラプレーン上で、肩関節外転150度前後のところです。

ちょうど、後頭部に手をのせた位置がゼロポジション付近です。

ゼロポジション

この写真の感じです。

最も安定したどの方向からもねじれの生じない、ローテーターカフの筋力も全てがつり合いなおかつその筋力発揮も最小の非常に楽で心地の良いポジションです。

骨解剖で見ると、肩甲骨の肩甲棘と上腕骨の軸が一直線になっているのもゼロポジションの特徴です。

この位置で運動させると、肩を痛めることはありません。

投球動作、バレーのスパイク、テニスのサーブなどゼロポジションを意識してみましょう。

肩甲上腕リズム

肩関節の拳上動作は180度の可動域があります。

この可動域のうち、前述の肩甲上腕関節が120度、肩甲胸郭関節が60度を担います。

2対1の割合で動くこの一連の運動連鎖を……

肩甲上腕リズム

といいます。

下図は、90度外転を例にしています。肩甲上腕関節60度、肩甲胸郭関節30度です。2対1の割合で動いてますね。

出典:プロメテウス 解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第2版 坂井建雄 医学書院

前述のどこかの関節に問題があると、この2対1の割合は崩れます。

そうするとゼロポジションにもっていくことや肩甲骨のスキャプラプレーン上でのキープも難しくなります。

特に肩甲胸郭関節は、胸鎖関節と肩鎖関節の動きに依存していますので、この2つの関節に関わる靭帯や筋肉の状態を常に良くしておく必要があります。

また、肩甲骨に滑ってもらう面側の胸郭の状態も大きく関わります。

ですので胸椎などにも注目するべきです。

肩甲骨はゴルフのピンの役割でした。

どこのポジションでもしっかりと上腕骨のボールを包み込んであげなければいけないわけですから、上腕骨の動きに合わせた肩甲骨の滑りはとても重要なのです。

さいごに

マニアックネタで、完全にトレーナー向けの記事になってしまいましたが、肩の不調に対するアプローチや肩のストレングストレーニングの際に少しでもお役に立てれば幸いです。

次はまた違う関節の記事をアップしてみたいと思います。いつかすべての関節の記事がアップできることを目標にチョコチョコと記事を作成していきます。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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ABOUT ME
相馬達也
相馬達也
「ウエイトトレーニングと鍼灸マッサージで日本を元気に!」を天に与えられた使命として日々試行錯誤しているパーソナルトレーナーです。1児の父でもあります。身体のことならお任せください。
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