日々トレーニング指導や施術に関わらさせて頂いていると……
- 口を大きく開けられない
- 顎を動かすとカックンと音が出る
- 歯が浮く
- 顎が痛い
このような症状を訴えられる方が居られます。
お医者さんに診断して頂くとほとんどが「顎関節症」と診断されます。
当方を利用してくださる方で、お医者さんに「顎関節症」と診断されているのは全員女性です。
生活習慣にも大きく関係しているといわれるこの病気。軽視して放置しているパターンも多く見られます。
軽視せずにまずはどんな病気なのか見てみましょう。
目次
顎関節症のメカニズムと症状
顎の骨は頭蓋骨の一部である「側頭骨(そくとうこつ)」とジョイントしています。
顎関節は栄養を摂取するのに、口を大きく開けれるようになっている為、関節は比較的緩くなっていて大きく動かせるようになっています。
出典:坂井建雄 プロメテウス解剖学アトラス 第2版 医学書院
ちなみに、物事に集中していると思わず口がポカンと開いていたなんて経験はありませんか?
良く動くということは逆に言えば、意識しないと簡単にぶら下がった状態で開いてしまうということです。
このぶら下がった状態で顎が落っこちずに踏みとどまれるのは、「咀嚼筋(そしゃくきん)」のおかげです。
口を閉じる、または噛むための筋肉です。
「咀嚼筋」には……
- 咬筋(こうきん)
- 側頭筋(そくとうきん)
- 内側翼突筋(ないそくよくとつきん)
- 外側翼突筋(がいそくよくとつきん)※外側翼突筋は開口にも関わる
があります。
出典:坂井建雄 プロメテウス解剖学アトラス 第2版 医学書院
肩こりや腰痛のメカニズムと同じで、これらの筋肉は常に力を発揮して顎を落とさなようにキープしているので、見た目には動きはありませんが常時筋肉を伸ばされながら収縮している状態です。
この状態の筋肉は徐々に疲労を溜めていき硬くなります。
そして硬くなると自分の意志で上手く動かせなくなります。
それと逆の口を開ける筋肉(舌骨上筋群)は常に力の抜けた状態が続くので筋力が弱くなっていきます。(使われない為)
この状態まで来ると顎関節の位置がズレて固定されてきます。
すると今度は口を開けづらくなります。
正しい位置で動かせないので、本来ぶつからないところにガシガシとぶつかりながら動くので音が鳴ります。
本来干渉してはいけないところにあたるので、炎症が起き痛みが出てきます。
こういった筋バランスで日々の会話や食事を続けていくとどんどん顎関節周囲が悪化します。
メカニズムは肩や腰の障害と同じですね。
結局は他の部位と同じで様々な動作を、顎でいえば口を開ける、閉じる、噛むといった動作をバランスよく行うことが大切なんです。
炎症や痛みが出ているのに放っておくと、今度は首や肩こり、ひどいと難聴も起きます。
顎の骨や側頭骨には首からの筋肉も沢山付着している為に、首や肩にも影響が出るのはなんとなくイメージできますが……
難聴???
解剖図をみてみると、顎関節のジョイント部のすぐ横に耳の穴があります。
この耳の穴を構成しているのが先程も出てきた「側頭骨」です。
側頭骨と顎の骨で関節を作っている為、顎に歪みが生まれれば、側頭骨もあらぬ方向に引っ張られたり、逆に顎の骨に干渉されたりしますから、耳の機能に影響が出るのはなんとなくわかります。
出典:坂井建雄 プロメテウス解剖学アトラス 第2版 医学書院
側頭骨は外耳、中耳といった伝音器官です。
読んで字のごとく「音を伝える」器官。
ここが障害されれば、内耳と呼ばれる感音器官、いいかえれば「音を脳で感じる器官」に正確な音が伝わらないのです。
MRGのクライアント様にも顎関節症で「難聴」を併発されている方がいらっしゃいます。
「音が曇るような感じ」と訴えられます。
顎関節症の原因
大まかな原因は顎周辺の筋バランスの悪化だということはわかりました。
ここではさらに掘り下げて、どういったことが原因で顎の筋バランスが崩れるのかを見てみましょう。
ストレス
日常生活に潜む様々なストレスが原因といわれています。
特に人間関係に関わるストレスは精神的に緊張を持続させて、歯をくいしばったり、睡眠中に歯ぎしりを誘発させます。
これにより咀嚼筋に大きな負担を掛けます。
癖
原因となる様々な癖があります。
- 食事の時に左右のどちらか一方だけで咀嚼する
- 頬杖をつく
- 猫背や前かがみでスマホやPC作業
- いつも口呼吸
- うつ伏せで寝る
などです。
生まれ持った形態
顔が小さく顎のサイズも小さい、また顎が小さく歯並びが悪いと噛みあわせが悪くなり筋バランスを崩します。
瞬発系スポーツ
瞬間的に力を発揮するスポーツや、強い力を出し続けるスポーツは歯を食いしばることが多くなり、咀嚼筋にダメージが加わります。
性差
男性に比べ、骨や筋が弱い女性に発症しやすいです。また女性の方が男性に比べあごが小さいのも原因です。
顎関節症への対処法や防止法
ストレングス専門のパーソナルトレーナーまたは鍼灸マッサージ師として考えられる対処法や防止法を考えてみます。
マウスピースの使用
ウエイトトレーニングでは高重量を扱うことが多いため、どうしても歯を食いしばります。
ある程度のレベルに達したクライアント様にはマウスピースを作ってもらっています。
これにより歯を保護し、顎関節に無駄な負荷を掛けなようにしています。
また顎関節症の診断をすでに受けられて治療を開始されている方については、指定のマウスピースの着用や、歯を食いしばらなくても実践できるギリギリの重量でトレーニングしてもらっています。
頚部のトレーニング
頚部を全方向からトレーニングします。
頚部は屈曲・伸展・回旋・側屈など様々な動作ができますので、ごくごく軽い負荷でトレーニングします。
すでに症状が出ている場合は、医師の許可を頂いてから、さらに軽い負荷か自身の頭の重みのみを利用して慎重に鍛えます。
側頭骨と顎の骨(下顎骨)のアライメント(位置)調整になります。
鍼灸マッサージ
対症療法的に、咀嚼筋や頚部の筋肉を中心に関連する経穴(ツボ)使い施術します。
肩回りから腕全体、全身調整が必要な場合は下半身までターゲットに施術します。
症状の出ている部位は過敏なため低刺激で施術します。
低刺激の方が十分な効果が出せます。強い刺激で施術するとほとんどが悪化します。
しかしあくまでも現状の不快な症状を緩和したり、顎関節症を罹患させないためのものであり、根本解決についてはトレーニングに意識を起きます。
さいごに
顎関節症は、結局のところ腰痛や肩こりに代表される整形外科的疾患とメカニズムが同じであるパターンが多く、生活習慣に大きく起因しているということです。
スマホやPC作業が多いのに、自分の身体の手入れはしないみたいなパターンです。
MRGでトレーニングされている方にも、就寝前にストレッチポールに乗ってもらう指示をしていますが、なかなか実践してもらえませんっ(笑)
そこで一回生活習慣をリセットするとしないとでは雲泥の差なのになかなかできないのです。
出来ていない人ほどとにかく不定愁訴が多いんです(泣)
もうこれは過去16年の指導歴での肌感覚ですが、ストレッチポールでいえばたった5分の実践ですが、365日続けた人とほとんどやらない人とでは、身体の状態が全く違います。
この記事は「顎関節症」でしたが、これ以外においてもどこかしらいつも調子が悪いと感じる方は一度生活習慣を本気で見直してください。
必ずそうなる原因となる落とし穴があります。
追伸ですが、聴神経にできる腫瘍が原因で難聴や顎の痛みが出る重篤なパターンもあるので、何はともあれ症状が出ましたらまずは必ず病院で診断を受けましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。