トレーニング

筋肥大・筋力・筋持久力・筋パワーの意味・定義を徹底解説

筋トレ用語で【筋肥大】【筋力】【筋持久力】【筋パワー】という、一見似たようなややこしいワードがあります。

当方のクライアントからもよく「筋肥大と筋力アップって違うの??」なんて訊かれたりします。

ということで、この記事ではややこしい筋トレワード「筋肥大・筋力・筋持久力・筋パワー」について書いていきます。

目次

筋肥大・筋力・筋持久力・筋パワーをそれぞれ解説

このややこしい4大用語、まずそれぞれの詳細を説明します。

筋肥大

文字通り、”筋が肥大する”つまり筋肉が大きくなるという事です。

専門的にいいかえると……

筋肉の量が増える

という意味です。

マッスルメモリーについての記事でも説明していますが、筋肉を太く体積を上げるには、筋肉に大きな力を出させるような負荷を与えて、筋の細胞核にシグナルを送らなければなりません。

筋線維筋線維(筋細胞)と筋核↑

出典:プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第2版 坂井建雄 医学書院

トレーニングの負荷によって、まず細胞核が自身の担当する領域の筋線維を太くします(体積を上げる)。

細胞核の担当領域は決まっているので、その領域内で肥大(体積アップ)が完了すると、それ以上の筋量アップは出来なくなります。

さらなる筋肥大(体積アップ)をするために、細胞核を増やして、新たな領域を産みだす必要があります。

その際に活躍するのが、サテライト細胞です。衛星細胞ともいいます。(上の図でいうと筋内膜と毛細血管のところに存在する細胞のこと)

このサテライト細胞、いつもは筋線維の外側に張り付いて、おとなしくしています。

しかし、ひとたび筋肉に強烈な刺激が入って傷がつくと、行動を開始します。

傷ついた筋線維に張り付き、新たな筋細胞核を産みだし、新生の筋線維を作り出します。

筋線維自体は筋細胞なので、筋線維が増えるイコール筋細胞が増殖するという事です。

筋細胞が増えたということは、新たな細胞核も増えているということでもあります。

この新たな細胞核は、自分の担当領域を肥大させ、筋肉はさらに太くなっていくわけです。

ここまでが筋肥大の主なメカニズムでした。

ちなみに、筋線維と筋線維の間にある筋内膜、筋線維が集合した筋線維束を束ねる筋周膜などの結合組織もあわせて肥大するので、副次的に筋肥大に関与しているといわれます。

筋力

トレーニング用語で良く使う狭義の「筋力」という言葉の意味は、最大筋力のことをいいます。

現在の自分の身体に備わっている筋肉量で、どれだけのMAX筋力を発揮できるかということ。

世間一般に言われる広義な「筋力」は、この記事のテーマである「筋肥大・筋力・筋持久力・筋パワー」をすべてを指します。これら4つの能力はまさに”筋肉の能力”なので、筋力といいます。

ここで解説するのは、前者(最大筋力)の「筋力」です。

最大筋力を発揮するには、今持ち合わせている筋肉でいかに100%近い力を出せるかがカギです。

ほとんどの人は、自分の筋力の50%も発揮できないといわれます。

筋線維は100%の力を出すと、挫傷(肉離れ)してしまいます。なので、普段からリミッターが掛かっている状態なんです。

トレーニングによって【筋力が高まる】というのは、この眠っている筋線維を叩き起こしてリミッター解除をし、100%を目指して動員させることを言います。

鍛錬すれば、50%しか力を出せなかった筋肉が、60~80%くらいまで力を出せるようになります。

ちなみに筋肥大した場合も筋力は並行して上がりますが、この場合は少しメカニズムが変わります。

筋肥大した際に筋力アップが起こる主な原因は、筋線維1本1本の筋力発揮率が上がるというよりも、筋線維の数や体積が増えたことにより、筋線維そのものの動員される数が増えたことにあります。

それぞれの筋線維の力発揮が50%のままだとしても、単純に筋線維の数が増えれば、力の総数が上がることがなんとなく想像できますよね。

筋持久力

文字通り、筋肉の持久力のことです。

ある動作を反復できなくなるまで繰り返す能力です。

ほとんどの人は、最大筋力の80%くらいの負荷だと、8~10回の反復回数で落ち着くんですが、負荷を軽くしていくと、個人差が出てきます。

最大筋力の40%付近から、30回できる人、60回できる人など大きな差が出てくるといわれます。

昔、テレビ番組でアスリート同士で腕立て伏せを競う企画を見たことがありますが、同じような体格で300回できる人もいれば、100回もできない人がいました。

あれがまさに「筋持久力」の差です。

筋パワー

「筋パワー」力×速度を指します。

ただ単純に筋力があるのは、力が強いだけです。

たとえば、同じ100kgのものを、Aさんは10秒で挙げました。Bさんは1秒で挙げました。

筋力換算だとは両者は100kgで、同等の筋力を持っています。

しかし、これが筋パワー換算になると……

分かりやすく1秒当たりの筋パワーで計算します。

Aさんの筋パワー

100kg÷10秒=10kg/秒

Bさんの筋パワー

100kg÷1秒=100kg/秒

こんなに変わってきます。

Bさんは、Aさんの10倍のパワーを持っていることになります。

乗り物で分かりやすく例えると、バスやトラックなどの大型車とフォーミュラーカーの違いです。

バスやトラックは力(筋力)はたっぷりとあるんですが、エンジンの1秒あたりの回転数(速さ)が低いので、パワー(筋パワー)がありません。

この特徴を活かし、ゆっくりと動作し、急激な動きを抑えながら、力は強いので悪路などでもブレずに、重たいもの(廃材や人員など)を確実に安全に運ぶことができます。

フォーミュラーカーは、力(筋力)もある上に、エンジンの回転数(速さ)も高いため、パワー(筋パワー)があります。

急激にスピードを上げることが可能です。そのかわり制御が難しくなるので、大量の人員や荷物を載せたり、悪路を走るのが苦手です。

F1ドライバーに誰もがなれないの理解できますね。お金が掛かるとか物理的な要因以上に、高い運転技術(制御)が必要になるからです。

筋パワーはこれと全く同じです。

力と速度を同時に高く発揮するには、身体を制御するテクニックが必要になります。制御ができないと大ケガをしてしまいます。

ですから、特定のスポーツをしていて、そのスポーツの動きに速度が必要であれば、筋力だけでなく筋パワーをトレーニングしなければなりません。

またスポーツをしていなくても、筋パワーを発揮しなければいけない局面、例えば、転倒しそうになったときなど、筋パワートレーニングをしていないとケガにつながります。

日常生活においても、筋パワーがあると、動作が速くなります。階段昇降のときなどで実感できる方が多いです。

以上のことから、筋パワー養成は、アスリート一般人問わず、大きなメリットがあります。

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筋肥大・筋力・筋持久力・筋パワーのトレーニング方法

次に具体的にそれぞれを目的とした場合のトレーニング方法を解説します。

筋肥大トレーニング

筋肉の量を増やすには、最大筋力の75~80%くらいの強い負荷とトレーニング量(筋力発揮時間を長くする)が必要といわれています。

ある種目で100kgが最大筋力なら75~80kgくらいの負荷を用いて拳上回数を多くこなし、トレーニング量を増やしましょうということです。

最大筋力の75~80%の負荷量だと、だいたい8~10回反復できます。

これを3セット以上繰り返しましょう。セット数が3セット以下だと筋肥大させるにはトレーニング量が足りないです。

そして、筋肉に長い時間刺激を送るためにセット間の休憩を1分前後と短くして、筋肉を疲れさせます。

以上の説明からわかるとおり、筋肥大トレーニングは「キツイ!!苦しい」のが特徴です。

ちなみに当方クライアントに良く訊かれるのが……

負荷は強ければ強いほどいいの??

という質問です。

最大筋力85、86、87、88、89、90%……と負荷を上げていくと、逆に筋肥大が起こりにくくなります。

全く起こらないわけではないんですが、筋肉のサイズにアプローチするよりも筋力が上がってしまう神経系のトレーニングなってしまうんです。また重すぎると回数をこなせない為、筋肥大するにはトレーニング量が少なくなってしまいます。

以上の理由から、筋肥大を目的とした場合、負荷を上げ過ぎると効率の悪いトレーニングになってしまいます。

最大筋力の75~80%の筋肥大トレーニングでも筋力は多少上がりますが、太くなる割合の方が高くなります。

筋力アップトレーニング

端的にいうと、筋肉のサイズを上げずに、力を出しやすくするトレーニングです。

実際は、多少は筋肥大もしますが、その割合が筋肥大トレーニングよりも小さくなって、力発揮に重点がおかれると捉えて下さい。

力発揮を鍛えるトレーニングは、筋線維の動員率を増やすだけなので、今ある筋線維数の限界に達すると、もうそれ以上の筋力向上は起きなくなります。

ここからさらに筋力を高めるには、筋肥大させて体積を上げたり、筋線維数を増やさなければなりません。

このような特徴を踏まえると、筋力アップトレーニングは、筋のサイズをあまり上げず、筋力だけを高めるので、身体を大きくしたくない体重別の競技容姿を重視する競技などに向いています。

トレーニング負荷量は、最大筋力の85~90%くらいを用います。このくらいの負荷量だと、最大でも6回くらいしかできません。

セット数は複数セットであれば、どれも効果があるそうです。ですので2~6セットくらいで組んでみましょう。

注意点は筋肥大トレーニングよりもセット間の休憩を3~5倍長く取りましょう。

力発揮のトレーニングのため、運動神経に負荷を掛けます。神経系の回復は筋肉よりも時間が掛かるためです。

筋持久力アップトレーニング

どんな負荷であれ、反復不可能になるまで繰り返すトレーニングです。

ただ前述していますが、高い負荷量だと、個人差があまり出ません。

最大筋力の40%の負荷くらいから、回数に大きな差が出るため、負荷を上げるとしても60%までに抑えた方が良いです。

重さや回数の設定は、自身の求める目的(どれくらいの時間の持久力が必要かなど)に応じて設定しましょう。

セット数は2~3セット、セット間インターバルは30秒以下で組んでください。

筋持久力系のトレーニングは運動量が多く、エネルギーをたくさん使うため5セットも6セットもできません。

筋パワートレーニング

筋パワーは力と速度を一番高く発揮できる負荷量を選びます。

下の図ごらんください。

力速度曲線

画像引用:NSCA JAPAN ヒューマンパフォーマンスセンター

速度が速くなればなるほど、力が弱くなり、力が強くなればなるほど速度が落ちます。

前述で筋パワーは「力×速度」といいました。

図からもわかるとおり、速度だけ鍛えても、力だけ鍛えても直接的な筋パワートレーニングにはなりません。(間接的には鍛えられる。)

力と速度を同時に鍛えるには、上図の曲線の真ん中あたりの負荷を用いると、力と速度の最も高いところでトレーニングでき、直接的な筋パワートレーニングになります。

曲線の真ん中あたりは、だいたい最大筋力の40~50%の負荷が相当します。

この負荷量を用いて、最大速度で拳上すると筋パワーが高まります。

筋パワートレーニングのプログラムの組み方は、運動神経まで負荷を掛ける行為なので、筋力アップのトレーニングと同じように設定しましょう。

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さいごに

筋肥大・筋力・筋持久力・筋パワーのそれぞれの違いをお伝えしました。

自身の目的に応じて、負荷量やセット数を決めてトレーニングすると、理想の身体に近づきます。

特に今までなんとな~くトレーニングをしていた方は、この記事で目的を明確にして上手くトレーニングしてみましょう。

注意していただきたいことは、筋力アップトレーニングや筋肥大トレーニングは高負荷を扱うので、いきなり開始せず、まずは採用するトレーニング種目のフォームを徹底的に身体に染み込ませましょう。

フォームがとれないと効果が無いばかりでなく、ケガの危険性が高まります。気を付けて実践してください。

もちろんMRGでも、フォームチェックやトレーニング指導、メニュー作成のご依頼大歓迎です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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ABOUT ME
パーソナルトレーナー
相馬達也
「ウエイトトレーニングと鍼灸マッサージで日本を元気に!」を天に与えられた使命として日々試行錯誤しているパーソナルトレーナーです。1児の父でもあります。身体のことならお任せください。
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