「マッサージの強さ」についての記事です。
当方のクライアント様においても……
「優しく弱めに押して~」
「強く押してください。効いてる感じがしないので……」
とお好みは様々です。
実際にはどちらが正解なのでしょうか?医学的根拠に沿って検証してみましょう。
目次
マッサージの定義とは?
世間一般に理解されている「マッサージ」、これって実は漠然としたイメージで伝わっています。
揉んだりするのもマッサージ、指で押すのもマッサージ、擦るのもマッサージ。
全ての手技がマッサージと呼ばれることが多いです。
ここで整理しましょう。
主として、手指、徒手により、生体に体表より力学的刺激を与えることで、生体が持つホメオスタシスを反応させ、健康増進、疾病の予防に寄与する物理療法を行う専門家を……
あん摩マッサージ指圧師
と呼びます。
厚生労働大臣から免許を与えられる国家資格です。
医師免許や弁護士免許と同じ国家資格です。
ホメオスタシスとは
生体がその外部環境の変化に関わらず、形態的、機能的状態をある範囲の安定した状態に保持すること。恒常性維持機能ともいう。元々生体に備わるとされる。ウォルター・キャノンが提唱した。
資格の名前を見て頂いてわかるとおり……
- あん摩
- マッサージ
- 指圧
3つの手技があることがわかります。
世の中ではこれをひっくるめて便宜上マッサージと呼んでいます。(この記事ではそれぞれの手技の違いなどの説明は省きます。)
あん摩マッサージ指圧の効果
あん摩・マッサージ・指圧について前述の定義を見て頂くと……
手指、徒手により、生体に体表より力学的刺激を与える
とあります。
力学的刺激なので、物理的な刺激、外部からの侵襲刺激であるともいえます。
ですから、例えば「よそ見をしながら歩いていて、電信柱に激突した」ときの刺激と大きな括りでいえば同じジャンルの刺激なんです。(めちゃくちゃ痛いですね?)
ちなみに、真夏にサンダルで満員電車に乗ったときに、ピンヒールのおねーちゃんに足の甲をピンの先端でブスっと踏まれたことがあります。
完全に打撲です。
激痛です。内出血してました……
ということはですよ……
あん摩マッサージ指圧も強烈なパワーで行うと、受けた相手は壊れます。
翌日なんかに打撲に似た状態になるんです。俗にいう「もみ返し」です。
私も駆け出しの頃は、加減がわからず力任せに施術して、よくクライアント様にご迷惑をお掛けしました。(この失敗が今に活きている……本当に感謝ですm(__)m)
ということで一足先に結論……
ということです。
せっかくの効果が逆効果になってしまうということです。
アルントシュルツの法則
神経の種類に体性神経というものがあります。
脳から運動器に向かってアウトプットされるものが有名な運動神経。
筋肉に命令を送る神経です。
逆に皮膚や筋肉から脳へ、「触れた、熱い、冷たい、かゆい、痛い」などの感覚をインプットするのが感覚神経(知覚神経)です。
この二つをひっくるめて体性神経系といいます。
自律神経系と一緒に末梢神経系を形成します。
あん摩マッサージ指圧は特にこの体性神経系にアプローチします。(自律神経系にももちろん影響を及ぼしますが)
この運動神経や感覚神経、ひっくるめて体性神経系には……
と呼ばれる、刺激の強度と神経の興奮性についての法則があります。
下の表をご覧ください。
弱い刺激 | 生体機能を鼓舞 |
適度な刺激 | 生体機能を亢進 |
強い刺激 | 生体機能を抑制 |
最強刺激 | 生体機能を停止 |
弱い刺激と適度の刺激が生体機能を高める(ホメオスタシスを高める)ことがわかります。
そして、強い刺激と最強刺激はその機能を抑制したり、停止させてしまうのです。
筋が興奮しすぎていて痙攣しているときや、神経が過敏になって神経痛が出ているときは生体の興奮を抑制しなければならないので強い刺激が必要であるという意見もありますが、あくまでも、あん摩マッサージ指圧師は受け手の生体機能を呼び起こさせる切っ掛け役にすぎません。
ということです。
受け手のホメオスタシスに逆らってはいけません。
適度な刺激で上手に受け手のホメオスタシスを喚起させてあげて、受け手自身の身体で回復できるように促してあげるくらいの気持ちで施術する方が良い結果が出やすいです。
強刺激を入れるにしても、ゆっくりと深く深部に圧が浸透するように持続的押すことと、そして圧を抜くときもゆっくりと抜くことで無駄に受け手の身体に有害な刺激を入れることを防ぐことができます。
強いマッサージ刺激を求めて
一方で苦行のように強い痛みに耐えないと効かないと思っている方が、未だ多いのも事実です。
強い刺激は脳に伝わった時に防御反応を起こします。
緊急反応といって自律神経系の交感神経が強く働き、筋肉を収縮させます。
交感神経によってガチガチに緊張した硬い筋は圧を入れても深く入らず、皮膚組織だけを痛めつける結果に。
これが炎症になって翌日痛むのです。
強い刺激に慣れている方は、常にこのような防御反応にさらされているので、筋肉がどんどん硬く適応します。
そしてさらにまた強いマッサージを受ける、さらに硬くなる、の悪循環です。
本来のあん摩マッサージ指圧は、ゆっくりと深く圧を浸透させて、押したり揉んだり擦ったりするものです。
こうすることで受け手に無駄な防御反応を起こさせることなく術者の手技を受け入れてもらえるのです。
競技前マッサージといって、これから身体を動かすときに行う施術は、あえて交感神経を喚起させることもあります。
しかし、基本的なマッサージは交感神経にアプローチするのではなく、副交感神経を優位にしてあげることが大切なんです
この状態で施術ができてくると、受け手にもいろいろな良い反応が出ます。
特に消化器系は副交感神経優位だと良く働くので、ほぐれてくるとお腹が鳴ったり、時にはおならが出てしまうこともあります。
「あら、失礼。」なんて謝ってくれるクライアント様もいらっしゃいますが、「全然謝らないでくださ~い」とお伝えしてます。
素晴らしい反応なので、こちらはニヤニヤと嬉しくなってますから。
さいごに
「痛ければいい、強ければいい」
ということではないことがおわかりいただけましたでしょうか?
気持ちいい程度、少し弱いかなくらいが一番効果が出やすいので、マッサージを良く受ける方そして施術を始めたばかりのセラピストさんは参考にして頂けたら嬉しいです。
適度な刺激のマッサージは、健康管理の一環になりますから、是非習慣にしましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。