足底腱膜炎について書いていきます。
足の裏が痛いとか踵が痛いなどが代表的な症状ですが、悪化すると爪先立ちでないと歩けないくらいに踵や足裏を付けることができなくなることも。
そんな【足底腱膜炎】の原因や病態、対処法を整理してみます。
目次
足底腱膜の場所はどこ?
足底腱膜(そくていけんまく)は足底筋膜(そくていきんまく)の一部のことを指します。
【足底腱膜炎】が世間一般で足底筋膜炎(そくていきんまくえん)と呼ばれているのはこのためです。
この足底筋膜は足の裏に存在する筋肉や細かい腱たちを覆う膜のことで、深いところと浅いところの2層で存在しています。
手書きです(笑)汚くて見にくいです。ご容赦ください。
赤いペンで書いた部分が足底(足の裏)の表面を覆う足底筋膜で、一般的な足底筋膜といえばここを指します。
そして青いペンで書いた深い位置の足底筋膜との間の空洞に足のアーチを形成する細かい筋肉達が入ります。
深い足底筋膜の上には、骨間筋(底側・背側)という指を開いたり閉じたりする筋肉が乗っかります。
文章だけではわかりにくいので解剖図で深い層から見てみましょう。
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足の裏ですよ~!まず骨のみからです
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そして骨間筋が付きます。細長い筋肉が並んでるところです。この上に深い層の足底筋膜が覆います。
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その上に親指(母趾)を動かす筋肉が付きました。(短母趾屈筋と短母趾内転筋)
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さらに親指(母趾)とそれ以外の指(四趾)に筋肉が付きます。(長母趾屈筋、長趾屈筋)これらの筋肉は足首をまたいでふくらはぎの付近まで伸びます。足底方形筋は長趾屈筋の補助をする筋肉です。
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そしてそして最後の層が付着しました。小趾外転筋、母趾外転筋、短趾屈筋です。この中の短趾屈筋を覚えておいてください。
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ドーーーーン!!表層の筋全体に再度、筋膜が覆われました。
これが浅い層の足底筋膜(そくていきんまく)です。
その中でも短趾屈筋を覆う膜が足底腱膜(そくていけんまく)です。
踵から趾(指)までをまたいで付着しています。
画像出典:プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論 第2版 医学書院
【足底腱膜炎】は、この短趾屈筋を覆う足底腱膜に慢性的な炎症が起きている状態のことをいいます。
足底腱膜の役割
足底腱膜は荷重時や体重移動時に、足部のアーチを保持する機能を有しています。
足のアーチについても確認しておきましょう。
画像出典:プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論 第2版 医学書院
このアーチをどんなときも保持しようとするのが足底腱膜なんです。
その制御機構を……
- ウィンドラス機構
- トラス機構
といいます。
ウィンドラス機構
ウィンドラス機構は主に運動時の足部アーチの維持に働きます。
アーチが安定することで……
- 衝撃吸収力アップ
- 足の安定感アップ
の効果があります。
運動時にとても大切な要素ですね。
実際にどういった機構なのか解剖図を使って見てみましょう。
画像出典:プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論 第2版 医学書院
ポイントは……
足趾(足指)
です。
足底腱膜はご覧のとおり、指(足趾)の関節(中足趾節関節)と踵の骨(踵骨)に付着しています。
足趾を持ち上げる(背屈する)と、ちょうど指(足趾)の関節(中足趾節関節)にまたがる足底腱膜が引っ張られます。
腱膜は伸ばされると縮もうとするので、踵の骨(踵骨)と趾(指)の関節を近づけさせようとする力が働き、アーチが高まるようになっています。
運動中は蹴りだし動作が多いので、体重が何倍にもなって足の前側に集中します。
そのため足自体の剛性を高めないと、力が分散し、効率良く蹴りだせないばかりか、衝撃を吸収できずに身体に大きなダメージが入ってしまいます。
このことから歩行や走行などの動作時にはウィンドラス機構はとても大切なんです。
トラス機構
ウィンドラス機構は指(足趾)の動きがポイントでしたが、トラス機構は指(足趾)の動きが起きなくても、体重が掛かれば働くようになっています。
立位時の衝撃吸収や、偏平足にならないようにアーチ保持をしてくれます。
画像出典:プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論 第2版 医学書院
立位時は体重とアキレス腱の張力により、アーチを潰そうとする力が働きます。それに対抗する力を自動的に発揮してくれるのが足底腱膜です。
いつも頑張ってくれてるんですね~。
足底腱膜炎症状や原因について
- 起床後の歩きだしの際に痛み
- 運動を開始する時に痛み
が代表的な症状です。
特に踵側の付着部には大きな負担が掛かりやすく、歩行や走行時は前述のウィンドラス機構が機能するので足底腱膜に強い牽引力が掛かります。
よって踵側の付着部は常にストレスにさらされているので特に痛みの出やすい部位になっています。
炎症が出てくると痛みを感じるようになる為、足底腱膜は硬くなりやすく、その近くを通る足底神経(坐骨神経→脛骨神経→足底神経)を圧迫することもあります。そうなると痺れが出ることも。
また、足の裏側の筋力が落ちたり、脛(スネ)やふくらはぎの筋力バランスが崩れると偏平足になることが原因になることもあります。
偏平足になり足裏の筋力が落ちるということは、前述の解剖図で注目して頂いた短趾屈筋の筋力も落ちます。
足底腱膜は、短趾屈筋と直接接していて、なおかつ両者の起始部(付着部)も同じであるため、偏平足になることでその張力を著しく失います。いいかえれば緩い状態。
そうすると立位時でトラス機構が働かないので、常に踵と足底腱膜の付着部には負担が掛かります。
徐々に足底腱膜よりもアキレス腱の力の方が強くなり、踵の骨は後方に持ち上げらえてしまうという悪循環に陥ります。
画像出典:プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論 第2版 医学書院
こういった症状が長く続くと、足底腱膜の中央部や前足部の付近にまで痛みが出てきたり、最終的には踵の骨に棘(とげ)ができてくることもあります。
ちょうど腱膜の付着部に棘(とげ)ができるので、足を付くだけで激痛です。
ここまで悪化した状態は変形性関節症と同じです。こうなる前に対処しましょう。
画像出典:プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論 第2版 医学書院
結論……
- 運動(ランやジャンプ)、立ち仕事のし過ぎなどのオーバーワークによる足底腱膜の緊張亢進
- 運動不足からくる、足の退化による足底腱膜の緊張低下
が大まかな原因として考えられます。
どちらにしても筋力バランスはかなり重要なファクターであるわけです。
パーソナルトレーナーとしての対処法
あくまでも私がストレングス&コンディショニングと鍼灸マッサージが専門のパーソナルトレーナーなので、それを踏まえた考えです。
まず急性期はどんな外傷でも、痛みや炎症を抑えましょう。
消炎剤、アイシング、安静が基本です。
慢性期であれば(足底腱膜炎が発覚する時はそのほとんどが慢性期といわれています)、まず原因が……
- 偏平足
- ハイアーチ
- 回内足
- 外反母趾
なのか適切に評価して、それに応じた足部のトレーニングをするといいです。
また足関節(足首)の柔軟性を静的、動的ともにチェックし、下腿の筋力も整える必要があります。
細かいトレーニングになるので、また違う機会に足部の特集記事などでアップしたいと思います。
あまりに硬い筋があれば鍼灸マッサージ、ストレッチングなどを駆使して、トレーニングとともに総合的に調整する必要もあるかと思います。
ある程度「痛みが減ってきた」とか「動かしやすくなってきた」などの改善がみられたら、バックスクワットやデッドリフトなどのストラクチュラルエクササイズで全身の関節を正しく連動させるウエイトトレーニングで身体を作り直すことで、再発を防ぎます。
さいごに
足底腱膜炎についてまとめました。
どんな疾患もそうですが、適切な筋力バランス、柔軟性がとても大切です。足底腱膜を適切に働かせるためにも日頃から全身の筋力と柔軟性の維持に努めましょう。
ケガの予防(足底腱膜炎防止)のためのウエイトトレーニング、もう「足底腱膜炎」になってしまった方のリコンディショニングは必ず専門家へかかりましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。