腰、お尻、大腿の裏側や外側、ふくらはぎやスネ、足裏と広範囲に痛みや痺れなど不快な症状を起こす坐骨神経痛。
前回の坐骨神経痛の記事はトレーニング指導者の視点でしたが、今回は鍼灸マッサージ師の視点で記事をまとめてみます。
目次
坐骨神経痛と鍼灸の相性
鍼灸は軽度の腰椎椎間板ヘルニア、または緊張した筋肉が原因となる坐骨神経痛(梨状筋、大腰筋、ハムストリングスが神経を圧迫)に有効です。
鍼灸は神経痛にとても効きます。
厚生労働省でも【保険療養費の支給適用となる疾患】として神経痛全般を認めています。
但し注意点として、保険を使って治療をする場合は医師の同意書が必要です。
逆に重度の腰椎の変形(腰部脊柱管狭窄症など)や内科的な疾患で起きている神経圧迫にはあまり効果は出せません。
まずは整形外科で痛みの原因を診断してもらいましょう。
坐骨神経痛とあん摩マッサージ指圧の相性
神経の過剰な興奮を鎮静する目的で手技を施術する場合、強めの刺激を入れると抑制できると言われています。
これをアルントシュルツの法則といいます。

ここで注意点があります。
まだ私自身がこの仕事で駆け出しの頃、アルントシュルツの法則に則っているつもりで、坐骨神経痛の方を施術したら症状が悪化したことがありました。
坐骨神経痛は腰椎に異常が発生して、炎症が伴うパターンが多いため、感覚が過敏になっています。
わかりやすくいいかえると……
神経痛そのものが弱い刺激でも大きな負担に感じやすいのです。
健常な方に施術した場合には弱い刺激でも神経痛患者には強刺激になるということです。
今の自分なら全く問題なく施術できますが、当時は未熟でした。
手技による施術は押したり揉んだり叩いたりなどの力学的な刺激なので、変形や異常のある骨も動きやすく、ましてや神経痛が出ている状態では、健常な方よりも神経が過敏で感覚が鋭いので、炎症症状をさらに強めて不快な症状を悪化させてしまう可能性があります。
弱い刺激でも充分な強刺激になりうる
ということを大前提にしましょう。
基本は痛んでいる患部は触らないか、触っても動かさず触れるだけくらいでちょうど良いといわれています。
あん摩マッサージ指圧には誘導作用がありますので、患部から離れたところを施術し、患部の循環に影響を及ぼすことができます。溜まった発痛物質、リンパ、血液などを誘導でき、心臓に戻します。
刺激量は患部でなくともかなり柔らかい優しい刺激で十分です。
鍼灸と同じで、必ず整形外科で診断してもらい医師の許可をもらってから、あん摩マッサージ指圧師(国家資格者)に施術をお願いしましょう。
まちがっても、明らかな症状が出ているときに、リラクゼーション系の国家資格を保持していない施術者に手技をお願いするのはやめておきましょう。医学的知識が低いため症状を悪化させてしまう危険性があります。
坐骨神経痛に有効なツボ
坐骨神経痛に対して身体の各所に有効なツボ(経穴)が存在します。部位別にご紹介します。
腰周囲
脾兪、胃兪、腎兪、志室、大腸兪
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出典:日本理療科教員連盟・東洋療法学校協会編 新版 経絡経穴概論 第2版 医道の日本社
お尻周り
胞肓、環跳
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出典:日本理療科教員連盟・東洋療法学校協会編 新版 経絡経穴概論 第2版 医道の日本社
下肢
殷門、委中、承筋、飛揚、陽陵泉、足三里、崑崙、太谿
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出典:日本理療科教員連盟・東洋療法学校協会編 新版 経絡経穴概論 第2版 医道の日本社
さいごに
まとめると……
- 鍼灸は軟部組織(ヘルニア、筋肉の緊張)が原因の場合かなり効く。但し骨の変形による坐骨神経痛にはあまり効かない。
- あん摩マッサージ指圧は強度に気を付けて、かなり弱い刺激で施術する。弱い刺激でちょうど良い強刺激になる。患部から離れたところを施術する。
それぞれの施術方法は素晴らしいものですが、疾患との相性、個人個人の感受性など様々な要因が施術結果に影響します。
上述の基本を抑えることで、施術による悪化を防ぐことができますので、坐骨神経痛で施術家にみてもらいたいと思われている方や新米の施術家・治療家さんに参考になればと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。