今回はトレーニングセッションの質を高めるサプリメント、クレアチンについてです。
プロテインほどではないですが、かなりポピュラーなサプリメントです。
そして、その効果も高く、トレーニング愛好家やアスリートからの支持も厚いサプリメントです。
見た目は怪しい白い粉ですが、薬でも何でもありません(笑)
今更な感もありますが、ここでしっかりその特徴や使い方、注意点などをまとめておこうと思います。
目次
クレアチンどうやって補給するの?
クレアチンは体内で生成されるもの、元々食品に含まれているもの、この2つのパターンによって身体に補充されます。
体内のクレアチンは、40%が遊離体で、残り60%がリン酸化された状態で骨格筋内に蓄えられています。また、心臓や脳、精巣にも少しだけクレアチンが蓄えられています。
骨格筋(筋肉)まで運ぶのに血液循環を介します。
遊離体
ある物質が他の化学種と結合していない状態の物質。単体、原子団ともいう。また化合物から結合が切れて分離する事。
体内で生成
その場所は主に肝臓です。(腎臓や膵臓も少量生成に加わる)
元々の物質はタンパク質です。タンパク質は分解されてアミノ酸になりますが、このアミノ酸のなかでも、アルギニン、グリシン、メチオニンが使われます。必須アミノ酸と非必須アミノ酸の両方が使われるんです。
このクレアチンの前駆体となるアミノ酸を肝臓がクレアチンに変えていきます。
元々食品に含まれているもの
肉、魚に多く含まれています。
サプリで補給する前に、まずこれら食品の摂取量を増やすのが大切です。
牛肉、豚肉、鶏肉の中では、ダントツに豚肉のクレアチン含有量が高いです。ただし豚は脂質も高めのため、食べ過ぎには注意です。
魚で特にクレアチン含有量が高いのは、マグロ、サケ、アジです。
特にアジは豚肉の2倍にもなります。
魚は刺身として食せるので、加熱の必要が無く、熱に弱いクレアチンを無駄なく摂取できます。
クレアチンのトレーニングに対する効果
クレアチンが運動やトレーニングで役立つ状態が、先ほども述べたリン酸化した状態です。
この状態を……
クレアチンリン酸
といいます。
専門用語ではCPとかホスフォクレアチン(PCr)などと呼ばれます。この形で存在してはじめて、エネルギー代謝で大切な役割が担えます。
特に短時間の高強度運動(坂道ダッシュとか垂直跳びなど)で、アデノシン2リン酸(ADP)をリン酸化して、アデノシン3リン酸(ATP)を作り出すときに大活躍です。
ATP(アデノシン3リン酸)の状態でないと筋を動かすエネルギーとして使えません。
クレアチンリン酸を分解して、クレアチンとリン酸に分けます。このリン酸を利用して、アデノシン2リン酸(ADP)をアデノシン3リン酸(ATP)に戻します。
高強度運動時にADPを急速に再リン酸化することが、クレアチンリン酸の役割とわかりましたが、この能力を上げるには……
クレアチンキナーゼという酵素と筋肉内のクレアチンリン酸の濃度を高める
ことが大切です。
特に後者のクレアチンリン酸の蓄えが枯渇すると、高強度運動はあっという間にできなくなってしまいます。
このような高強度運動(全力ダッシュや幅跳び、ウエイトリフティングのような運動)の継続時間が長くなるとともに、クレアチンリン酸の供給は急激にダウンします。
これが高強度運動時の疲労メカニズムです。
クレアチンリン酸は6~10秒で60%枯渇するといわれていますので、全力運動を10秒も継続するとほとんど動けなくなります。回復にも時間が掛かるので、高強度運動を何度も繰り返せば、完全に枯渇するといわれています。
筋肉内のクレアチンリン酸がほぼ無くなれば、それ以上最大運動が行えないので、勝負のかかった競技アスリートはもちろんですが、最大拳上重量付近の負荷でウエイトトレーニングを行う方にとっても死活問題です。
以上のような理由から、クレアチンリン酸濃度を少しでも維持できれば、高強度運動(全力運動)の持続能力が高まるわけですから、アスリートからトレーニング愛好家までクレアチンサプリがポピュラーになったのも頷けます。
アスリートであれば、ライバルに少しでも差をつける為に!
トレーニング愛好家であれば、高負荷高重量トレーニングで疲労を感じず粘れて、よりトレーニング効果を出せるように!
こんな目的で摂取しているわけです。実際、クレアチンサプリは効果を実感しやすいので人気も高いです。
さらに、こうした使用の広がりから、トレーニング系サプリの中でも最近まで多くの研究結果も残っていて、その研究結果は一貫して有意なものばかりです。使わない手はありません。
特にトレーニングを積んだ選手では、ベンチプレス、スクワット、パワークリーンでの筋力増加率が、クレアチンを摂取していない群と比較して2~3倍にもなることがあるそうです。
これらの結果から、筋力増強の余地がほとんどないくらいに鍛えられた選手でも、クレアチン摂取によりさらに筋力を増強できる可能性があるということなので、トレーニングや競技パフォーマンスで伸び悩んでいる方は導入を検討してみましょう。
ワークアウトや競技練習、試合などの質(疲労の抑制、回復促進)を高められるので、結果的に練習やトレーニングの質を向上できます。
クレアチンの摂取方法について
摂取方法には2つあります。それぞれ見ていきましょう。
ローディング法
従来より採用されてきた方法です。
- ローディング量と期間
1日20~25g(体重換算の場合は体重1kgあたり0.3g)を5日間摂取
- メンテナンス期
ローディング終えたら、1日2g摂取で高まったクレアチン濃度を維持する
この方法は、5日間でほぼ最大までにクレアチン濃度を高めことができ、上記の維持量を摂取しつづける限り、筋肉内のクレアチン濃度が上昇した状態を保てます。この方法の利点は、一刻も早くクレアチン濃度を高めて効果を出したい時です。
この方法の欠点は、ローディング期間に20~25gを4~5回に分けて摂取しなければならないので、手間がかかることです。(一度に摂取してもすべてが吸収されずに体外に排出されてしまうため)
非ローディング法
最近の研究結果から、ローディング期を設けなくてもそれに近い濃度まで高められることがわかっています。非ローディング法は……
約1か月間、毎日3~5gのクレアチンを摂取
します。
このような摂取方法で、筋内のクレアチン濃度が最大になります。
この方法の利点は、1日1回摂取すればOKなので手間がかからないことです。
欠点は、クレアチン濃度が高まって効果が出るまで時間が掛かるということです。
その期間は30日です。ローディング法だと5日なので、すぐにパフォーマンスを上げたい場合は向いていません。
のんびりペースでパフォーマンスを上げても問題ない方は、わずらわしさがない分お勧めです。この方法でも最終的にはローディング法と同じくらいのクレアチン濃度になりますから安心して実践してみて下さい。
クレアチンによる体重変化と有害作用について
クレアチンの副作用ををみていきましょう。
体重変化
クレアチンは長期間摂取すると、体重の増加が起こります。
体重増加と聞くと、「え?いやだな~」と感じる方もいると思いますが、増えるのは体脂肪ではなく、除脂肪体重です。
筋細胞内の浸透圧勾配が増加してくるので、筋肉内に水分が流入するためです。
もう一つの原因は、クレアチンにはタンパク質の合成を促進する作用がある為に、筋量も増えるといわれています。
以上の点から、クレアチンによる体重増加は身体を衰弱させる副作用ではないので問題はありません。
但し、体重別の競技をされる方は摂取には注意が必要です。
有害作用
コントロール(正しい摂取方法を守る)された研究においては、重大な副作用は報告されていません。
4年以上クレアチン摂取を続けた26名の競技選手で、健康状態を調べた後ろ向き研究でも、ローディング期にたまに胃腸がもたれたという報告が少数で、症状はガスが溜まる、軽度の下痢程度のものでした。
ただし、用法容量を守らないと、強い胃腸障害、心血管障害、筋痙攣の可能性があります。
クレアチンはアミノ酸由来ですから、窒素が含まれます。
窒素はアンモニアに分解され、肝臓で解毒し尿素へと変換させます。尿素は腎臓でのみ排泄できますので、腎機能や肝機能に問題がある方は、摂取の際は医師に確認を取りましょう。
クレアチン摂取による腎不全の例は全世界みても報告はありませんので安全といえそうですが、念のため上記の件については頭に入れておきましょう。この辺の危機管理はアミノ酸やプロテインの摂取も同じです。
さいごに
他のサプリよりもトレーニングやスポーツで効果を感じやすいサプリだと思います。
トレーニングや競技で伸び悩んでいる人には特におすすめですよ!!
今回の記事を読んで頂いて、長所や注意点をしっかり頭に入れて安全に効率よく使用してみて下さい。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
《参考文献》
金久博昭・岡田純一 第3版 NSCA決定版 ストレングストレーニング&コンディショニング ブックハウスHD 2010年