臨床医学

【ケガ・傷害の基礎知識】外傷と障害というややこしいワードの違いとは?

ケガ

前回記事「パーソナルトレーナーとリハビリテーション」の続き的内容です。

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この記事では運動器のケガについて解説します。

運動器の傷害やケガは受傷段階や部位などによって様々な種類が存在しますが、おおまかには外傷(傷害)と障害に分類されます。

外傷と障害の違い

外傷障害

なんとなく似たような言葉ですが、明確に意味が異なります。

外傷は……

大きな外力

一瞬で破壊

急性症状

そして障害は……

小さな外力

徐々に破壊

慢性症状

が特徴です。

外傷はドカーンと強い力が掛かって破壊されます。

骨折や打撲(挫傷)捻挫肉離れなどがその代表疾患です。

障害は小さな外力の蓄積で関節や骨、筋肉を徐々に蝕んでいきます。

疲労骨折腰痛変形性関節症腱炎腱鞘炎などがその代表疾患です。

外傷(ケガ)の種類

前述のとおり、外傷・障害と一口に言っても、その種類は様々です。

ここでは、ドカーンと一発で痛めてしまう外傷のそれぞれの特徴を簡単にまとめてみます。

捻挫

スポーツではもちろんのこと、日常生活でも良く見られる外傷です。

そのほとんどが足首(足関節)に発症します。

捻挫は関節を急激に捻ることで、その関節を支持する靭帯を伸ばしてしまったり損傷してしまう外傷です。

関節には参考可動域という解剖学的な可動範囲が存在します。

この可動範囲を越えて急激に伸ばされると関節が破壊され、病的症状が出ます。

捻挫の衝撃は靭帯はもちろんのこと、関節包や滑膜などにも波及します。

 

関節関節包の構造

出典:解剖学 改訂第2版 医歯薬出版

特に滑膜に炎症が起きると、滑膜からは関節を円滑に動かすための滑液が過剰に分泌され太く腫れあがります。

さらに炎症時の滑液には発痛物質が含まれるために、腫れだけでなく痛みも伴います。また血液も流れ込みます。

これらが原因となって、あの独特の熱感腫れ変色が見られるんです。

ちなみにケガの程度(Ⅰ度・Ⅱ度・Ⅲ度)によって、この症状が強くなります。

骨折

骨折は外力によって骨の連続性が部分的、または完全に断たれた状態を指します。

骨折は分類方法が多岐に渡ります。

いわゆる強烈な外力で折れる骨折は「外傷性骨折」といいます。

逆に小さな外力が同じ部位に繰り返し掛かって骨折するものを「疲労骨折」といいます。

また骨自体に病気(基礎疾患)があって2次的に骨折が起こることもあります。これを「病的骨折」といいます。

原因となる基礎疾患は、骨粗鬆症骨軟化症です。

また折れ方による分類もあります。良く聴く骨折用語で「複雑骨折」があります。

この「複雑骨折」、なんとなく粉々になるイメージですが……

粉砕骨折

↑こんなイメージ

医学的な分類では「開放骨折」といって、皮膚が破られて、外界と直接触れている骨折を指します。

感染症や大量出血になりやすい骨折なので要注意です。

複雑骨折

逆に皮膚を破らず体の中で起こる骨折を「単純骨折」とか「閉鎖骨折・皮下骨折」といいます。こちらは皮下出血だけで感染症の心配はありません。

骨折

また「完全骨折」「不完全骨折」という分類もあります。

前者は完全に離断した骨折、後者は完全には離断していない骨折でいわゆるひびが入った骨折です。

力の伝わり方による分類もあります。

外力の直接作用した部位が骨折することを「直達骨折」、離れた部位が骨折することを「介達骨折」といったり、鎖骨などは屈曲力(曲げる力)が掛かって骨折するので「屈曲骨折」、骨粗鬆症などで骨がもろくなると、立位で脚の骨や背骨は押し潰される力で折れるので「圧迫骨折」といいます。

屈曲骨折圧迫骨折

他にも筋肉や腱、靭帯のけん引力で、その付着部にある骨ごと引き裂かれて分離する骨折もあります。

これを「剥離骨折」といいます。スポーツ外傷で多発する骨折です。

剥離骨折

症状は、疼痛機能障害変形異常可動域軋轢音腫れ皮下出血などです。

骨が折れているところを押すと激しい痛みが出ますが、この場所を「マルゲーヌの圧痛点」といいます。

柔道整復師さんが骨折の判断(診断ではない)の際に、この特徴的な圧痛点を目安の一つにするようです。

また「複雑骨折・開放骨折」では、激しい痛みと大量出血があるのでショック症状を呈することがあります。

また骨髄から漏れた骨髄脂肪が塞栓になって肺血管を閉塞してしまい呼吸困難やチアノーゼを呈して肺水腫になってしまう事もあります。この状態は両者ともに重篤です。

ショック症状とは

冷汗、顔面蒼白、虚脱、脈拍不触知、呼吸不全の5つの症状が代表的。これにプラスして血圧低下や頻脈が見られることがる。生命に危険がある状態なので救急搬送が必要。

脱臼

関節面の生理的な接続が失われているものを脱臼といいます。

この中でも関節包が破れて、完全に接続が失われているものを「完全脱臼」、一部が接続しているものを「不完全脱臼・亜脱臼」といいます。

骨折と外力の掛かり方が似ている為、骨折が併発することも多いです。

一度脱臼すると「癖になる」といわれますが、そのとおりです。

脱臼時に関節をまたぐ靭帯は強烈に伸ばされますので、回復後は靭帯が緩くなり、脱臼しやすくなると言われています。

また慢性化するとあまり痛みを伴わず脱臼するようになります。

良く発生する関節は……

  • 手指

です。

症状は、痛み、腫れ、異常肢位(変形)、機能障害です。

脱臼の特徴的症状としては「弾発性固定」があります。

関節が外れているのでその位置から動かせず、無理に他人が動かしても、その位置に戻ってしまう現象です。整復されないと回復しません。

挫傷(打撲)

身体の表層から打撃的な外力を受けて生じる外傷はすべて挫傷(打撲)です。

打撃を受けた部位の血管にダメージが入るので、循環が遮断されます。

よってその部位にはどんどん血液やリンパ液が溜まり、周囲の組織に広がります。

これが内出血の状態です。

この血が血腫という塊になり、周りの筋肉や神経を圧迫することがあるので、速やかにアイシングや圧迫などで血流を制限することが大切です。

ダメージの度合いによって、Ⅰ度(わずかに動きが制限)、Ⅱ度(かなり動きが制限)、Ⅲ度(ほとんど動かせない)に分類されます。

症状は、疼痛、腫れ、熱感、内出血、機能障害です。

肉離れ

書籍によっては肉離れを筋挫傷と呼ぶ場合もあります。

筋肉に強い力が掛かって急激に収縮したり伸ばされたときに発症します。筋の断裂や伸張です。

強度によって分類できます。

Ⅰ度は明らかな筋線維の断裂はありません。急激に引き伸ばされて反射的に収縮した状態です。

Ⅱ度は部分的な断裂が伴ってきます。これに加えて筋の機能が低下します。正しく動かせないです。

Ⅲ度は完全断裂なので、全くその筋肉は機能しなくなります。痛みのレベルも半端じゃありません。

治癒後の特徴として瘢痕(はんこん)形成があります。

筋の断裂した部分を埋める線維芽(せんいが)細胞です。

この線維芽細胞、筋肉と違う構造なのでその境目からまた肉離れを再発しやすくなります。再発を防ぐために瘢痕がある部位は念入りにケアをしなければなりません。

症状や経過は打撲(挫傷)とよく似ています。

肉離れ
大胸筋断裂を自ら経験して感じた【肉離れ・筋断裂】の大切な治療方法トレーニング指導者、鍼灸マッサージ師である私が自ら体験した大胸筋断裂の経験を元に、肉離れ・筋断裂の定義、正しい対処法、実際に感じたことを解説します。この記事を読めば、肉離れ・筋断裂による後遺症を最小限に食い止めることができます。...
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外傷・障害の最初の処置は?

基本的には何か身体に異常が生じた時は、すぐに医師に診断を仰ぐの当然として……

医師に診せるまでの応急処置、また外傷や障害で炎症症状が強い時には「RICE処置」を行いましょう。

Rest(安静)

運動器に異常が生じたら、その部位は動かさないことが基本です。

破壊されている部位は脆い状態ですから、動かしてしまうとさらにその部位を破壊します。

また他の部位も壊れることもあります。

炎症症状も亢進してしまうので無駄に内出血なども増えて、機能障害が増幅するだけでなく、回復も大幅に遅れます。

テーピングやギプスで固定するのが一般的です。

Ice(冷却)

一番重要な項目です。

冷やすことで血流を抑えます。

血液の粘性が増すので炎症物質が組織に漏れだしません。

炎症が引くので痛みを感じにくくなるのも大きなメリットで、筋の緊張を緩和します。

また炎症中は組織が大量の酸素を必要としますが、冷やすことで酸素の必要量を下げ、円滑に細胞の代謝を促します。

水に湿らせた氷を入れたアイスパックを用いましょう。

氷は水に湿らせないと0度になりませんのでここが大切です。

保冷剤や凍らせたゲルは0度以下なのでタオルなどを巻いて使いましょう。

感覚が無くなったら外してください。感覚がある場合でも最長で20分くらいに留めましょう。凍傷を防ぎます。

1時間くらい休憩して寝るまで繰り返します。急性の怪我であれば、これを2~3日続けます。

Compression(圧迫)

アイシングと同じ考えです。

圧迫することで、あえて血流を阻害します。

効果はアイシングと同じです。アイシングと違い凍傷の危険が無いので、1日中継続できます。

弾力包帯などで適度に圧迫固定する(固定し過ぎない)のがポイントです。

また、肉離れなどは傷があるので、圧迫することで傷を広がらないようにすることも可能です。

睡眠時は虚血状態にならないよう念のため中止します。

Elevation(高挙)

患部を心臓より高くします。

無駄に血液が患部に行かないようにするのと、静脈に乗せて血液を心臓に戻すことが大きな目的です。

効果はアイシングや圧迫と同じです。高挙は睡眠時も行います。

さいごに

「いまさら何を」感が満載な記事でした。

しかしながら、外傷や障害の違い、ケガの最初の対処(ファーストエイド)など意外と知らなかったという方も結構いらっしゃることも事実です。

間違った対応をしないようにしっかりとこういった基本を押さえておきましょう。

特に運動愛好家は、トレーニング中に怪我してしまうことや、疲労が知らず知らず蓄積して慢性的な症状が出ることは良くありますから、とても大切です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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ABOUT ME
相馬達也
相馬達也
「ウエイトトレーニングと鍼灸マッサージで日本を元気に!」を天に与えられた使命として日々試行錯誤しているパーソナルトレーナーです。1児の父でもあります。身体のことならお任せください。
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