前回の記事では3大栄養素について記しましたが、今回は「補酵素」と呼ばれるビタミン・ミネラル(前回の三大栄養素とビタミン・ミネラルを合わせて五大栄養素ともいいます。)についてです。
たくさんの種類や役割があり、覚えるのも大変ですが、ここでしっかりまとめておきましょう。
目次
ビタミン・ミネラルの概要
よく例えられるのが、自動車のエンジンオイルです。
エンジンオイルがないと、主役のエンジンはガソリン満タンでもスムーズに車体を動かせません。
エンジンが熱くなりすぎないように冷やしたり、摩擦でエンジンが傷まないように潤滑油がわりになったりと、影で主役の活躍を支える存在であるエンジンオイルは、ビタミン・ミネラルの役割に良く似ています。
具体的には、身体の成長を促進したり、体調を整えたりと様々な役割があります。
これらには様々な【酵素】が必要なんですが、この酵素をスムーズに働かせるのが主な役割です。
ですので、ビタミン・ミネラルは補酵素(ほこうそ)ともよばれます。
また、ミネラルの一部は身体そのものの構成成分にもなります。
たとえばカルシウムは骨や歯、鉄は血液(ヘモグロビンの一部)などです。
ビタミン・ミネラルが不足すると、不調が現れてきます。
疲れやすかったり、病気にかかりやすくなったり、太りすぎたり、痩せすぎたり、力が出なかったり等その症状は様々です。
必要量はごくわずかですが、毎日の摂取基準を満たさなければなりません。
ビタミン・ミネラルの違い
働きはよく似ているんですが、成分・構造が異なる為、両者は【ビタミン】、【ミネラル】として分類されています。
ビタミンは身体の構成成分である、炭素(C)、水素(H)、酸素(O)などからできていて、炭素原子を持つと有機物になるので有機化合物といわれます(ヒトも有機化合物)。
しかし身体の中では、ほとんどのものが合成できません(一部のビタミンは合成できます。)ので、意識的な食べ物から摂取が大切です。
ミネラルは上記の3つの元素(C・H・O)と窒素(N)以外の元素からできていて、無機物(鉱物)といわれます。
こちらは全て合成できませんので、食べ物からの摂取が必要です。
摂取基準について
摂取基準に関しては、年代によって大きく変わりますので、こちらのグリコさんの表がわかりやすいです。
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ビタミンの種類
主要ビタミンをそれぞれ説明します。
ビタミンA
視覚機能や皮膚・粘膜の形成、抗酸化作用に関わります。
脂溶性ビタミンなので、すぐに代謝されない為に身体に蓄積しやすいので、摂り過ぎに注意です。
不足すると夜盲症(やもうしょう)といって、暗い所での視力補正が効かなくなります(暗順応できない)。眼球も乾燥してきます。
過剰になると、月経不順や発疹、頭痛、吐き気、黄疸、幼い子だと発育不良なんてのもありますので、親御さんは要注意ですね。
多く含まれるものは、卵黄、レバー、乳製品、ニンジン、魚の肝油などです。
ビタミンB1
糖の代謝に関わります。
食後に強烈に眠くなってしまう人は、B1不足かもしれません。
疲労回復効果や神経の安定効果もあります。こちらは水溶性ビタミンなので、尿や汗とともにどんどん排出されてしまい不足しやすいビタミンです。
不足すると、脚気(かっけ)や多発性神経炎になりやすくなります。
多く含まれるものは、豚肉、玄米、豆類などです。
ビタミンB2
補酵素(特に脂質の代謝)として働いたり、粘膜を正常に保つなどの役割があります。水溶性です。
不足すると、口角炎、口唇炎、舌炎、皮膚炎にかかりやすくなります。
多く含まれるものは、レバー、卵、乳製品、納豆などです。
ナイアシン(ニコチン酸)
三大栄養素の代謝に関わります。補酵素としての役割ではボス的存在です。水溶性です。
不足すると、ペラグラという皮膚の炎症を起こします。
多く含まれるものは、レバー、肉類、魚類、穀物、豆類、木の実、マッシュルームなどです。
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ビタミンB6
アミノ酸の合成と代謝に関わります。タンパク質系の重要な補酵素です。
トレーニングする人とは関わりの深いビタミンです。水溶性です。
不足すると、口角炎、舌炎、皮膚炎にかかりやすくなります。
多く含まれるものは、穀類、レバー、アボカド、ほうれん草、緑色の豆、バナナなどです。
ビタミンB12
赤血球を作ったり、神経系の働きを調整したり、タンパク質の代謝にも関わります。
なかでも赤血球の新生には必須のビタミンです。
また神経のメンテナンスも行ってくれるので神経痛にも効くとされています。水溶性になります。
不足すると、悪性貧血(巨赤芽球性貧血)になります。
このビタミンは胃から分泌される内因子によってのみ吸収されるため、胃に障害があるとあっというまに悪性貧血になってしまいます。栄養補給しても貧血症状が治まらない場合は、すぐに医師へかかりましょう。
多く含まれるものは、肉、魚、卵、牛乳などの動物性食品です。
葉酸
赤血球を作り出す役割があります。
B12と協力するイメージです。水溶性です。
不足すると、悪性貧血(巨赤芽球性貧血)になります。
多く含まれるものは、緑黄色野菜、果物、大豆、レバーなどです。
ビタミンC
結合組織(コラーゲン)、骨、歯を作ったり、鉄分の吸収を上げたりします。抗酸化作用も有名ですね。
免疫に関わったり、アルコールやニコチンの解毒など、その役割は豊富です。
マルチプレーヤーゆえに失われやすいビタミンとしても有名です。水溶性です。
不足すると、壊血病(かいけつびょう)や皮下出血が増えます。
コラーゲンが弱り、血管の細胞同士がゆるい結合になってしまうため、出血が増えます。
多く含まれるものは、果実、野菜などです。
ビタミンD
カルシウムとリンの吸収を促進して、骨の形成を促進します。脂溶性です。
不足すると、くる病、骨軟化症、骨粗鬆症にかかりやすくなります。くる病は子供の骨軟化症です。
過剰になると、腎障害が起きますので要注意です。
多く含まれるものは、魚、卵黄、しいたけ、レバーなどです。
ビタミンE
体内の過酸化物を中和することで、老化や発癌を防ぎます。ビタミンCでもでてきましたが、抗酸化作用といいます。
標的は活性酸素ですが、活性酸素は悪者ではありません。
活性酸素は悪者として世間一般に浸透していますが、一定量なければ、身体は機能しません。特に免疫系に深くかかわっています。
増えすぎると、上記のように様々な老化現象や発癌の可能性が高まるので、抗酸化を適度に行うことが大切なのです。脂溶性です。
不足すると、動脈硬化や溶血性貧血になります。
除去されずに増えた活性酸素が、血管壁に酸化させたコレステロールを沈着させて硬くしてしまったり、赤血球の細胞膜を攻撃してしまい破壊してしまうことが原因です。
多く含まれるものは、植物油、麦芽、レバー、緑黄色野菜などです。
ビタミンK
血液凝固に関与していて、止血作用があります。
具体的には、血漿タンパクのひとつであるフィブリノゲンをフィブリンという状態に変えます。
フィブリノゲンのままでは役に立ちません。フィブリンが血を固めてくれます。脂溶性です。
不足すると、出血傾向になります。
多く含まれるものは、緑黄色野菜、卵黄、大豆、レバーなどです。
ミネラルの種類
主要ミネラルをそれぞれ説明します。
カルシウム
骨や歯の構成成分としてあまりにも有名ですが、心筋、骨格筋、神経細胞の活動にも深く関与しており、ここらへんが忘れられやすいところです。
不足すると、骨軟化症、骨粗鬆症、発育不全は当然として、テタニーといって筋肉が痙攣する状態になることもあります。
過剰だと、腎障害や尿路結石にかかりやすくなります。
多く含まれるものは、牛乳、乳製品、小魚、豆類、緑黄色野菜などです。
ナトリウム
体内の浸透圧の調節や、体液量のコントロールに深くかかわります。
不足すると、頭痛、悪心、嘔吐、食欲不振、ひどいと意識障害などがあります。
汗とともに失いやすいですから、炎天下では特に補給が必要です。カリウムとともに、筋肉や神経伝達にも関与しているので、こむら返りの原因にもなります。
過剰だと、高血圧、浮腫、心臓病、脳卒中などがあります。
多く含まれるものは、塩です。
鉄
ヘモグロビンの構成要素になります。赤血球を作り出すのに大変重要な栄養素です。
不足すると、鉄欠乏性貧血や舌の委縮などがみられます。
過剰だと、血鉄素症(ヘモジデローシス)になります。身体中に鉄が過剰に蓄積し、いろいろな臓器に悪影響を及ぼします。
多く含まれるものは、レバー、海藻類、きくらげなどです。
カリウム
細胞内液の主要成分です。
ナトリウムの排泄を促すことで、血圧を調整したり、神経や筋肉の興奮、その情報を伝達したりします。
不足すると、高血圧、不整脈、最悪の場合は心停止、脳卒中などがおきます。発汗などでカリウムやナトリウムが減り、イオンバランスが崩れると、こむら返りも起きやすくなります。
多く含まれるものは、緑黄色野菜、果物、海藻類、豆類などです。
ヨウ素
甲状腺ホルモンの生成に関わります。
サイロキシン、トリヨードサイロニンというホルモンが有名です。
これらは摂取された栄養分を代謝して、身体の組織を作る為に働いたり、エネルギーに変換したりします。わかりやすく言い換えれば、新陳代謝を刺激・促進する働きです。
このホルモンが出過ぎると、バセドウ病になります。
逆に少なくなりすぎると、橋本病、クレチン病(小児)になります。
ヨウ素自体の過剰、不足は甲状腺腫にもかかりやすくなります。
多く含まれるものは、昆布やワカメなどの海藻類です。
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マグネシウム
筋収縮に関わる細胞内の電解質(カルシウム)の調整を行ったり、骨の成長や維持にもカルシウムとともに関与します。補酵素としても働きます。
不足すると、震えや痙攣などが起きます。
たいていの食品に含まれますので、あまり不足することはありませんが、ストレスに弱いミネラルですので、消耗もしやすいです。
リン
カルシウムやマグネシウムと結合して、骨や歯を作ります。エネルギー源のATPの一部でもあります。
不足、過剰共に骨粗鬆症、骨軟化症に注意です。
食品添加物として清涼飲料水や加工食品、スナック菓子などに大量に含まれるため、むしろ現代では過剰気味です。
カルシウムとリンの比率は1:1が理想ですが、血中にリンが溢れると、骨からカルシウム・マグネシウムが溶けだし、血中ノリンとくっついてしまうので、骨がもろくなります。
銅
ヘモグロビンの合成に関与します。
ヘモグロビンの生成には鉄が必要でしたが、銅はこの鉄を必要な場所に運ぶ役割があります。
不足すると、貧血になります。
過剰になることは、通常の食生活ではありませんが、先天的に銅の代謝がうまくできずに、蓄積してしまうウィルソン病があります。
多く含まれるものは、魚介類、レバー、ナッツ、大豆、ココアなどです。
亜鉛
皮膚や髪の状態を良くしたり、アルコールの分解、味覚の正常化、性機能の維持、免疫の活性化、タンパク合成、抗酸化作用など、球技などで例えるとユーティリティープレイヤーです。
不足すると、味覚障害や肌荒れ、抜け毛、精力減退などの症状が現れます。
過剰では、頭痛、吐き気、倦怠感などがありますが、過剰になることはまずありません。余分なものはすぐに排泄されてしまうためです。
多く含まれるものは、牡蠣、穀類、レバー、煮干し、ナッツなどです。
さいごに
微量ながら欠かすことのできない栄養素であることがお分かり頂けたかと思います。
サプリメントで摂取する場合は単体のビタミンで摂取するのではなく、ベースサプリと呼ばれる「マルチビタミン・ミネラル」をまず摂取しましょう。
それぞれのビタミンやミネラルがお互いに良い影響をし合うには、それぞれの摂取量を満たさなければ良い効果は発揮されません。
マルチビタミン・ミネラルで全体の底上げし、その中でも自分の生活スタイルなどで消耗しやすい【単体ビタミン】や【単体ミネラル】を加えると効果的です。
ただ単にビタミンCだけで美容とか、亜鉛だけで精力アップとかはあまり賢い使い方ではありません。
トレーニングでも消耗しやすい栄養素なので、それぞれの特徴を理解して過不足なくバランスよく摂取してみましょう。
次回は水分についてです。お楽しみに。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。