この記事は「使える筋肉と使えない筋肉」について熱く語ります!
まあ筋肉に使えるも使えないもないんですが……、ここはわかりやすくするためにあえてということで。
目次
使える筋肉と使えない筋肉の定義
ウエイトトレーニングをはじめとする筋トレ系の話題につきものなのが、この「使える筋肉」と「使えない筋肉」という概念です。
ではこの両者の違いは何なのか?見ていきましょう。
世間一般でいわれる使えない筋肉のイメージ
結論から言うと、ボディビルやフィジーク競技に代表される、太さだけを追求して収縮スピードや持久力などの筋の質を考慮しない、また全身の連携運動などの神経系トレーニングをあまり行わないで鍛えた筋肉のことをいいます。
「見せかけの筋肉」、「見せ筋」なんて揶揄する人もいます。
世間一般でいわれる使える筋肉のイメージ
こちらは逆に「競技パフォーマンス」を向上してくれる筋肉というイメージでしょうか。
専門的にいうとパワー発揮に優れた筋肉というイメージです。
運動やスポーツを華麗に素早くダイナミックにこなせる「あこがれ筋」とでも名付けましょうか(笑)
パワーの定義
使える筋肉のイメージでパワー発揮に優れた筋肉とお伝えしました。
そこで疑問が湧き起こります。
「え?普通のウエイトトレーニングではパワーは付かないの??」
と思いますよね。
この疑問を生む原因は、我々日本人の「パワー」という言葉の解釈の間違いにあります。
パワーはフォース×ベロシティです。
わかりやすく日本語に置き換えると……
力×速度
となります。
重いものを速く動かせる人はパワー(筋パワー)が高いということになります。
使えない筋肉になってしまう原因
普通のウエイトトレーニングで鍛えているのは「力」の部分です。
力を上げていけば、計算上は速度が1のままでも、少しづつパワーは向上します。
ですから、ボディビルダーが使えない筋肉という考えは基本的には間違いです。
スクワットを200kgを1回挙げれる人と100kgを1回挙げれる人が、100kgのスクワットを同時に行ったら、絶対200kgを挙げれる人のほうが速く動作を完了できます。
このことからもボディビルダーの究極の筋力がパワー向上に寄与していることがわかります。
ではなぜ運動が下手だったり、実際に運動でスピードを出せないボディビルダーが存在するのでしょうか?
全身連携トレーニングの不足が原因
速く走ったり、高くジャンプしたり、ボールを遠くに投げたり、強いパンチやキックを放つには、ボディビルダー的な筋肉に効かせるトレーニングばかりしていると、上手くできなくなってしまう事があります。
こういったスポーツ動作は反動を上手く使った全身の筋を連携させた動きなので、一般的なウエイトトレーニングとは真逆の運動です。
全身連携を高める専門的なトレーニングが必要です。
ウエイトトレーニングが「力」を鍛えるのに対して、このようなトレーニングは「速度」を鍛えるものが多いです。
競技の動作であれば、その競技の技術練習そのものを行うことも大切です。
技術練習自体が全身連携トレーニングになります。
筋の力発揮の違いが原因
マラソン選手なら筋が長時間力発揮できて疲れにくくなるように、ウエイトリフティングや100mスプリントであれば、一瞬で最大の力が出せるように鍛えなければなりません。
一般的なウエイトトレーニングは、それぞれの競技と筋肉の使い方が違うために、ギャップが生まれてしまいます。
使える筋肉(あこがれ筋)の作り方
アスリートは、大きな試合でベストを出すためにトレーニングを計画的に行います。
筋肥大 → 筋力アップ → 筋パワーアップ
といったように、トレーニングの目的を変化させ、試合で最高のパフォーマンスを発揮できるようピークを合わせていきます。
このようにトレーニングを期分けすることをピリオダイゼーションと言います。
アスリートだけでなく、一般のトレーニーもピリオダイゼーションを取り入れる必要があります。
よくありがちなのは、筋肥大メニューを何年もやり続けるパターン。
筋肉は大きくなるけれど、いわゆる「使えない筋肉」のままです(あえてこの言葉を使っています。本来筋肉はどう鍛えようが同じものです)。
「使える筋肉」=「機能的な身体」を作るためには……
まず筋肉を大きくします。
筋力を底上げするためにはそれ相応の断面積が必要だからです。(筋肥大期)
それから重い重量を持てる筋肉に変革させて神経と筋肉の連携効率を上げます。(筋力アップ期)
最後に重いものを速く動かすトレーニングや自分の身体を速く動かすトレーニングをしてスピードやパワーを向上させるトレーニングへと移行させます。(筋パワーアップ期)
パワーアップを目的としたトレーニングにまで移行して初めてパフォーマンスが向上し、日常生活やスポーツの場面に活きてくるのです。
筋肥大・筋力・筋パワーそれぞれの期のトレーニング方法
具体的なトレーニング方法をご紹介いたします。
筋肥大トレーニング
筋肉を大きくし、身体の土台作りを行います。いわゆる「ボディビル的なトレーニング」の時期です。
- 8~12回が限界の重さで、2~3セット、セット間休憩1分。
- スクワット、デッドリフト、ベンチプレスなどのコンパウンド種目中心。
筋力アップトレーニング
体験したことのない重い重量で神経回路に刺激を与える時期です。
ショック療法的に身体を叩き起こすようなイメージです。
- 3~5回が限界重さで、2~5セット、セット間休憩3分。
- スクワット、デッドリフト、ベンチプレスなどのコンパウンド種目中心。
筋パワーアップトレーニング
最大筋力を瞬間的に発揮出せるように全身を連動させます。
反動動作の練習になり、専門的にはSSC(ストレッチショートニングサイクル)という各筋の伸張反射を誘発させます。
- スピードアップが目的なら最大筋力の50%以下、筋パワーアップが目的なら最大筋力の70%くらいの重量を使って、最大スピードで反復。回数は3~5回、セット間休憩は3分以上。
- 最大速度で反復するスクワット、デッドリフト、オーバーヘッドプレス。スラスターやプッシュプレス、スイングなどのセミクイックリフト、パワークリーンやパワースナッチなどのウエイトリフティング、自体重で早く身体を動かすラダードリルやプライオメトリクスなど。
さいごに
筋トレで付けた筋肉が「使えない筋肉」で、スポーツで付けた筋肉は「使える筋肉」という偏見が無茶苦茶な話であるということがお分かり頂けたかと思います。
どのように発達させようが、筋組織に何の差もありません。
要は特異性なので「何を目的に筋肉を鍛えたか」、いいかえれば「何のために身体を動かしたか」による差に過ぎないのです。
ボディビルダーは究極の筋肥大を競う競技で勝つことを目標にしています。
大きくすることが目的です。
全身連携のトレーニングに時間を割く暇なんてありません。
筋を目立たせるために、どの競技以上にも食事管理も徹底しています。
そもそも目的が違うので、スポーツができないから「使えない筋肉」と揶揄すること自体ナンセンスです。
逆に他のスポーツ選手に「その筋肉じゃボディビルはできないよ~、情けない筋肉だな~」と揶揄しないでしょ?
だって究極の筋肥大を目的に競技してないですから。
健康を目的にするなら、すべてのトレーニングを満遍なく行うことが大切です。
それなりの筋サイズ、それなりの筋力、それなりの筋パワーがなければ、あちこちが痛くなったり、とっさのときに転倒してしまったり、生活習慣病にかかってしまったりします。
スポーツパフォーマンスを高めたいなら、まずケガをしない身体作りを目標にしましょう。
ケガしないためには正しい関節機能を身体に身に付けさせないといけません。
そのためにはやはり筋肥大も筋力アップも筋パワーアップもすべてが必要なのです。
競技練習で技術を磨きながら、並行して別の時間に身体を鍛えるのはもはや当たり前です。
この記事で「使える使えない筋肉神話」に終止符を打っていただければ幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。