ヒトの骨の数は約200個(200~206個)で構成されているといわれています。
ごくまれにですが、本来の個数よりも多く骨が存在することもあります。
この余分な骨のことを「過剰骨(かじょうこつ)」といいます。
今回はこの過剰骨の中でも比較的多いものについてまとめてみます。
目次
過剰骨とは
整形外科学では「副骨」ともいいます。
胎児のときに存在し、発生学上必ずある骨です。
本来過剰骨は、産まれるまでに他の骨と癒合して一つの骨になり消滅します。
それが何らかの原因で癒合せずに残存してしまう骨のことをいいます。
過剰骨は足部に多く、2足歩行のヒトにとって厄介な存在になりやすい骨でもあります。
代表的な過剰骨の種類
比較的みられる過剰骨をまとめてみます。
外脛骨
足部はアーチを形成しますが、2つの縦アーチと1つの横アーチでテント状になっています。
母趾球、小趾球、踵の三点の上に立つ三角形のテントをイメージしてください。
このテントの頂点に当たる骨が「舟状骨」です。
出典:プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第2版 坂井建雄 医学書院
上の図は右足の解剖図で、内側からと上側からみた図です。
内側から見ると、アーチの一番高いところに位置し、まさにテントの頂点です。
上から見ると、一番内側に出っ張っている位置です。
この舟状骨に付着する余分な骨を……
外脛骨(がいけいこつ)
と呼びます。
出典:プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第2版 坂井建雄 医学書院
本来は存在しない骨ですが、外脛骨を持っている人は多く、5~7人に1人の割合です。
この骨があるとやっかいなのは、痛みを伴ってくることです。
存在していても痛みが発生しないパターンの方が割合的には多いのですが、お持ちの半数近くの方は足の内側になんらかの痛みを伴ってくるのです。
この病態を有痛性外脛骨(ゆうつうせいがいけいこつ)といいます。
舟状骨には、後脛骨筋腱が付着します。
ということは外脛骨が存在する場合、後脛骨筋腱は外脛骨にも付着します。
足底(右足)
出典:プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第2版 坂井建雄 医学書院
後脛骨筋は足首を動かしたり、足のアーチ保持をしたりと、大変重要な筋肉です。
ちなみにこんな動作で鍛えることができます。
やや小趾球よりに荷重しながら踵を持ち上げるのがポイントです。
スポーツなどで激しく足を使ったり、逆に足が退化しアーチが下がってきたりすると、この後脛骨筋腱に緊張が起き、外脛骨に負担が掛かります。負担が掛かると干渉する後脛骨筋腱に炎症が起きますので、痛みを発生させるのです。
以上のような発症理由から……
- スポーツ活動が盛んな若い世代
- 運動不足傾向また筋力低下しやすい世代
に多い疾患といわれています。
外脛骨は、舟状骨には付着せず独立して後脛骨筋腱の中に存在するタイプや、逆に舟状骨に完全に付着するタイプ、また独立していても大きい為に舟状骨と常に干渉しているタイプなど様々です。
三角骨
距骨(きょこつ)の後部に存在する過剰骨のことを……
三角骨
といいます。
距骨は脛骨(スネ)と踵骨(かかと)の間にある骨のことです。
出典:プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第2版 坂井建雄 医学書院
位置を見て頂ければ、なんとなくわかると思うのですが、足首を伸ばす運動で痛みが出ます。
例えるなら、クラシックバレエやバスケのジャンプ、サッカーのインステップキックのような動作です。
踵を思いっきり持ち上げた時にこの三角骨が足首の後ろに挟まれます。
またここにも長母趾屈筋という筋肉の腱が通りますので、擦れて負担が掛かり有痛性外脛骨と同じような炎症反応が起きてくることもあります。
出典:プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第2版 坂井建雄 医学書院
まとめると……
- 挟み込みの痛み
- 長母趾屈筋腱の炎症による痛み
の2つの要因で痛みが発生するのです。
疾患名は「足関節後方インピジメント症候群」、「三角骨障害」などと呼ばれます。
この骨は外脛骨より持っている方は少なく、10人に1人の割合です。
通常は痛みはありませんが、上記のようなスポーツをされる方でオーバーユースになると傷んできます。
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頚肋骨
本来、肋骨は胸椎にしか存在しませんが、先天性の奇形で、第7頸椎に肋骨が存在する人がいらっしゃいます。
これを……
頚肋骨(けいろっこつ)
といいます。
出典:プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第2版 坂井建雄 医学書院
上の図を見て頂くとよくわかりますが、頚肋が腕神経叢と鎖骨下動脈を圧迫しているのがわかりますね。
元々この部位は、前斜角筋と中斜角筋、第1肋骨で形成される斜角筋隙(しゃかくきんげき)が存在します。
ただでさえ狭い隙間なのに、この頚肋骨がさらに隙間を狭くしてしまうのです。
腕神経叢を圧迫してしまい、腕や手が痛んだり、痺れたりします。
ま力が入りにくかったり、手の感覚が鈍くなったりもします。
鎖骨下動脈の圧迫により、手先が冷えることもあります。
この症状は、胸郭出口症候群の1つでもあり、「頚肋症候群」といいます。
ファベラ
膝関節の外側後方に存在する過剰骨です。
ちょうど腓腹筋の外側頭の起始部付近に存在します。
出典:プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第2版 坂井建雄 医学書院
膝の曲げ伸ばしやふくらはぎの筋肉の使い過ぎで、ファベラと腓腹筋腱が擦れて炎症が起きます。
急激な発症はありませんが、徐々にファベラの部位だけが痛くなってきます。
疾患名は「ファベラ症候群」です。
さいごに
本来存在しない骨が沢山あることがお分かり頂けたかと思います。
過剰骨(副骨)はそれ自体が痛みを発生する事はありません。
隣接する軟部組織に干渉することで症状が出てきます。
原因はオーバーユースだったり、筋力低下だったりがほとんどなので、日頃の筋力強化、柔軟性維持、疲労マネジメントが大切です。
痛みを無視して、管理を怠ると手術して除去しなければならなくなります。
手術は代償が大きいので、できるだけそのレベルまで悪化させないように日頃からコンディショニングに努めましょう。
過剰骨が存在していても、無症状でいることができますよ。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。