生理学

【肝臓の解剖学・生理学】初学者向けに機能や役割について解説

ヒトの身体で最大の臓器、肝臓についてです。

身体の様々な機能に大きく関与するといわれる肝臓ですが、具体的な機能をしっかり理解している方は少ない印象です。

トレーニングを実践する上でも重要な臓器ですので、その機能や役割を説明します。

目次

肝臓の解剖(外観編)

まずは外観の解剖を説明します。

肝臓は、ヒトの身体中の最大の実質性器官、そしてでもあり、腹腔の右上部に位置します。

実質性器官中身が空洞ではなく身が詰まった臓器のことを指します。ちなみに中身が空洞の場合は中腔性器官といいます。

様々な物質を生成、貯留、分泌する器官のことを指します。腺は細かく分類すると、内分泌腺と外分泌腺に分かれます。

重さはなんと……、

約1200g

もあります。小さいダンベルくらいあるんですね~。結構重たいですよね?

色は暗褐色で、形はくさび形です。

肝臓

↑横隔面(前から見た図)

肝臓

↑臓側面(下から見た図)

出典:プロメテウス解剖学アトラス コンパクト版 坂井建雄 医学書院

上の面は横隔膜と接するので横隔面(おうかくめん)、下の面は凸凹状の面になっていて、胃などの諸臓器と接するので臓側面(ぞうそくめん)といいます。

横隔面

再度、横隔面の解剖図を見てみましょう。

肝臓

出典:プロメテウス解剖学アトラス コンパクト版 坂井建雄 医学書院

後部を除き、そのほとんどを腹膜で覆われています。腹膜は腹腔の左右から伸びてきて、正中線のやや右側で合わさって、前後に走る腹膜のヒダを形成します。これを肝鎌状間膜(かんかまじょうかんまく)といいます。

この肝鎌状間膜を境に、肝臓を右葉と左葉に分けます。右葉は肝臓全体の4/5を、左葉は1/5を占めます。横隔膜の後方部は一部腹膜が無く、この部位だけ直接、横隔膜と接しています。この部位を無漿膜野(むしょうまくや)といいます。

臓側面

こちらももう一度解剖図をチェックです。

肝臓

出典:プロメテウス解剖学アトラス コンパクト版 坂井建雄 医学書院

隣接する内臓によって凸凹になっているのが確認できます。左葉側には胃と食道の圧痕があり、右葉側には結腸、腎臓、十二指腸の圧痕があります。

肝臓

また、H状の形をした1本の横溝と2本の縦溝がみられます。横溝は肝臓に出入りする血管(固有肝動脈、門脈)、肝管(総胆管)、神経が通ります。この部位は肝門(かんもん)といいます。

H状の両縦溝に挟まれる部分右葉(うよう)に区分されます(この部分を左葉とする区分もあるがここでは割愛)。この挟まれる部分は横溝にあたる肝門によって前後に分けられます。

前は方形葉(ほうけいよう)、後は尾状葉(びじょうよう)といいます。

右側の縦溝には、前側に胆嚢、後側に下大静脈を通す凹みがあります。

左側の縦溝前部は、前述の肝鎌状間膜を折り返した肝円索裂(かんえんさくれつ)があり、このなかに肝円索(かんえんさく)を入れています。これは胎児の頃の名残です。

この肝円索裂のなかにお母さんとへその緒でつながる臍静脈(さいじょうみゃく)がありました。臍静脈が生後、肝円索に変わります。

また左側縦溝後部には、静脈管索裂(じょうみゃくかんさくれつ)といって、静脈管索(じょうみゃくかんさく)が通っています。これも胎児循環の名残で、胎児時代は静脈管(じょうみゃくかん)別名:アランチウス管といいました。

静脈管(アランチウス管)は、門脈に合流する臍静脈(先ほど説明した胎児時代の血管)から分かれて、直接下大静脈に接続する血管です。

この静脈管(アランチウス管)が生後、静脈管索に変わります。

文章だけだと非常にややこしいので、胎児循環と生後の血液循環の比較図を載せておきます。図が小さくて申し訳ないのですが、指で拡大して見てみてください。

胎児循環↑胎児循環

生後循環

↑生後循環

肝臓の解剖(実質編)

今度は肝臓の内部についてです。

ここまででもかなりややこしいですが、さらに細かくなります。

肝臓の内部のことを肝実質(かんじっしつ)といい、その肝実質の構造的単位を肝小葉(かんしょうよう)といいます。

肝小葉

↑肝小葉

この肝小葉が規則的にズラーーーーッと並んで肝臓を形成しています。肝小葉は直径1~2mmくらいの大きさです。六角形で柱状になっています。その中心には中心静脈が縦に走り、そこを中心として放射状に肝細胞が連なった肝細胞索(かんさいぼうさく)が伸びています(下図参照)。

肝細胞索

↑肝細胞索

肝細胞索

↑類洞(洞様毛細血管)拡大図

上図(肝細胞索の図)を見て頂くと、右側に中心静脈が見えます。左側には位置する門脈(小葉間門脈)固有肝動脈(小葉間動脈)が見えますね。

次に上図(類洞拡大図)をご覧ください。

左側の門脈(小葉間門脈)、固有肝動脈(小葉間動脈)から入ってきた血液は、類洞(洞様毛細血管)を経由して流れ込み、中心静脈に向かって流れていきます。中心静脈は下大静脈に繋がって、最終的に心臓に還っていきます。

類洞と肝細胞索の間にはディッセ腔という隙間があり、そこに類洞周囲脂肪細胞(伊東細胞)がみられます。

ここに脂溶性ビタミンのビタミンAを貯蔵します。(上図肝細胞索参照)

類洞内にはクッパー細胞というマクロファージの一種が待機し、免疫機能を発揮しています。血液に含まれる毒素や異物を貪食(どんしょく)してくれています。(上図肝細胞索参照)

肝臓の血管について

門脈:胃や腸から集めた栄養素を含んだ血液を運ぶ血管。肝内血流量のうち4/5にもなる。ここを通る血液は酸素は無く栄養しか含まれていない。栄養(糖質やタンパク質)の代謝をするために流れ込んでくるので、肝臓そのものを活性化させる血液ではない。機能血管と呼ばれる。

固有肝動脈:消化器を経由せず、大動脈から直接注ぐ酸素豊富な血液が通過する血管。肝内血流量の1/5。肝臓が元気よく働くために、ここから肝臓に常時酸素が供給される。栄養血管と呼ばれる。

次にもう少しシンプルな図で説明します。

肝細胞索

出典:解剖学 改訂第2版 全国柔道整復学校協会監修 医歯薬出版株式会社

門脈(小葉間門脈)、固有肝動脈(小葉間動脈)、小葉間胆管】が左側のエリアでまとまって存在しています。

この三者を肝3つ組(かんみつぐみ)といいます。

この肝3つ組を血管周囲線維鞘(グリソン鞘)が束ねています(上図肝細胞索参照)。

グリソン鞘に前述で説明した肝臓への流入血管が集合するため、ここが血流分布のメインになり、これに中心静脈や類洞(洞様毛細血管)と合わせて、肝臓の機能的単位として見ることができます。(機能的単位とは、何人かのそれぞれの専門家が集まって、ひとつの仕事をこなすための最小単位、部署みたいなイメージです。)

血管の次は胆道、胆汁についてです。

胆汁は肝臓から分泌されますが、肝細胞が作り出します。

脂肪分を消化するために必要な液体です。

胆汁は、肝細胞の間を縫って走る毛細胆管、そしてへーリング管という連絡路を通過し、小葉間胆管に流れ込みます(上図肝細胞索参照)。

ここから左右肝管→総肝管(肝門に存在。)→胆のう(水分を抜き濃縮される・食事をしないときはここに保存。)→総胆管(食物が十二指腸に到着すると、胆のうが収縮。総胆管に胆汁を排出。)→十二指腸と流れていきます。(下図参照)

胆管

出典:解剖学 改訂第2版 全国柔道整復学校協会監修 医歯薬出版株式会社

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肝臓の機能

肝臓は自律神経系の副交感神経によって機能が促進します。

ここからはその生理機能についてです。順に見ていきましょう。

物質代謝

三大栄養素ビタミン・ミネラル、ホルモンの代謝を行います。

わかりやすく言い換えると、ヒトの身体の中で栄養を使える状態にするのが主なお仕事です。

糖質代謝

小腸で吸収されたグルコース(単糖類)から、グリコーゲン(多糖類)を合成して貯蔵します

また血中のグルコース(血糖)が低下すると、貯蔵していたグリコーゲンをグルコースに分解して血中にも供給します。

タンパク質代謝

小腸で吸収されたアミノ酸から、各種タンパク質を合成します。

各種タンパク質で代表的なのが血漿タンパクです。アルブミン、フィブリノゲンといいます。

またアミノ酸から別のアミノ酸を合成したり、タンパク質分解の際に生じる有毒物質アンモニア尿素に変換し無毒化したりします。

プロテインの飲み過ぎは、肝臓に負担を掛けてしまうことがわかりますね。

脂質代謝

脂質から脂肪を合成したり、脂肪から脂質に分解したり、胆汁の元であるコレステロールを生成したりします。

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ビタミン・ミネラル代謝

各種ビタミン・ミネラルの貯蔵や放出に関わります。

ビタミンは類洞周囲脂肪細胞(伊東細胞)に脂溶性ビタミンのビタミンAを貯蔵すると前述しましたが、ミネラルは鉄がメインです。

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ホルモン代謝

各種ホルモンの前駆物質の生成・変換、余分なホルモンの不活性化を行います。

前駆物質とは?

化学反応などで、ある物質が生成される前の段階にある物質のこと。

胆汁の生成

解剖のところでも記しましたが、肝臓を形作る肝細胞によって生成され、脂肪の分解・消化・吸収を行います。

また、血中コレステロールの値の調整にも関与します。

解毒作用

血液中の有害物質を無害化します。専門的にはグルクロン酸抱合酸化といいます。

一番有名な解毒作用はアルコールの代謝でしょう。

飲み過ぎは肝臓を疲弊させますので、ほどほどにしましょう!

薬物の解毒も行います。薬物の脂溶性を低下させて尿中に排出させやすくします。

血液凝固に関与

血を固める血液凝固因子と、固まった血を溶かす抗血液凝固因子を生成します。

これらは傷を負った時などに傷口を塞いだり、治癒させたりする際に活躍します。

  • 血液凝固因子

フィブリノゲン、プロトロンビン

  • 抗血液凝固因子

ヘパリン

血液の貯蔵

全血液量の10%を貯蔵します。出血時に放出します。

生体防衛作用

解剖の項でも説明したクッパー細胞というマクロファージの一種が、貪食(どんしょく)という食作用で、血液中の異物を除去しています。

さいごに

肝臓は沈黙の臓器と言われますが、寡黙にいつも仕事をこなしている実直な内臓なんです。

一説には500個以上の役割があるとも言われています。常に頑張ってくれているんですね~。

前述の役割・機能から考えてみても……

  • 食べ過ぎ・飲み過ぎ(栄養代謝の亢進)
  • 運動不足による血流低下(肝臓に血が来なくなる)
  • ストレスによる自律神経失調(副交感神経が肝臓の司令塔)
  • 過剰な筋肉への負担(アンモニアの大量発生)
  • 薬物の過剰摂取(薬物代謝の亢進)

は肝臓を疲弊させます。

トレーニングを習慣にされている方は、ストイックに追い込みすぎる方も多く、知らず知らず肝臓を酷使しています。

ウエイトトレーニングは、タンパク質の代謝が活発になりますから、毒物のアンモニアの大量発生が起きます。これをまた解毒しなければなりません。

MRGはウエイトトレーニングを指導させていただいているマイクロジムなので、クライアント様の日頃のストレス・食事摂取状況・睡眠時間などを必ず聴取して、その日の運動強度を決定します。

また、あまりに筋肉の疲労や精神疲労が高い時には、トレーニングよりも鍼灸やあん摩マッサージ指圧などで疲労を除去することを優先します。

自身でウエイトトレーニングや有酸素運動を行っている方は、慢性疲労に陥る前に、肝臓を労わる日を設けてみて下さい。

「何事も過ぎたるは及ばざるがごとし」です。健康を重視して身体作りを行いましょう。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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ABOUT ME
パーソナルトレーナー
相馬達也
「ウエイトトレーニングと鍼灸マッサージで日本を元気に!」を天に与えられた使命として日々試行錯誤しているパーソナルトレーナーです。1児の父でもあります。身体のことならお任せください。
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