「有酸素運動は20分以上行わなければ効果がないの?」というテーマです。
実際このように専門家に指示されて、有酸素運動を行っている方も多くいらっしゃるでしょう。
はたして本当に20分以上でないと効果がないのか?短い時間じゃ意味がないの?
そんな疑問をわかりやすく説明したいと思います。
目次
エネルギーについて
まず、ヒトを動かすエネルギー源である糖質・脂質・タンパク質について、しっかりポイントを抑えましょう。
糖質
筋肉、血液の中に存在しています。今直ぐエネルギーとして使えるのが特徴です。
1g=4kcalあります。
以前に他の記事でも書きましたが、預金に例えると普通預金に似ています。
普通預金ってお金が欲しい時にすぐ現金化できるのがメリットです。
ですが……、一般的に普通預金は、生活資金など比較的小さいお金の口座なのが常識です(普通預金にもたくさん入ってるよ!!という方もいらっしゃると思いますが……)。
ですから、現金化していれば、あっという間に枯渇します。
糖質も同じです。素早くエネルギーを得れますが、無くなってしまうのも早い。
ちなみにエネルギーがすぐ欲しい時というのは激しい運動の時です。
激しい運動は、すぐに使えるエネルギーを供給してくれないと動けません。
この状態を、専門的にはエネルギー需要の高い状態といいます。
エネルギー需要の高い代表的な運動は……
- ウエイトトレーニング
- 短距離走(スプリント)
- ジャンプ動作
などです。
これらは何十分、何時間と続けられませんよね。
脂質
脂質は、血液中(遊離脂肪酸)、腹膜(内臓脂肪)、皮下組織(皮下脂肪)に存在します。
純粋な脂質は1g=9kcalでたくさんのエネルギーを得ることができます。
体脂肪の状態になると、純粋な脂質に加えて水分が少し混ざりますから、1g=7.2kcalに下がります。
まあどちらにしても、糖質に比べ大きなエネルギー量があります。
しかし糖質と大きく異なるのが、糖質のようにすぐ使えるエネルギーではないということです。
血中に存在する遊離脂肪酸は糖質のようにすぐに使えますが、腹膜や皮下組織の体脂肪は、遊離脂肪酸に変換して血液中で使える状態にしなければならないために、時間と手間が掛かります。
先程、糖質を普通預金に例えましたが、こちらは定期預金のイメージです。
定期預金は大きなお金を預けて、金利で儲けるイメージですが(現在は大した金利ではありませんが……泣)、現金化するには窓口で手続きをするなど手間と時間が掛かります。
脂質を良く使う状態というのは、それほどエネルギーを必要としていない状態のときです。
先程の糖質とは逆で、エネルギー需要の低い状態です。
この状態の運動や動作は、急激ではないので、必要なエネルギー量が低く、緩やかに供給されても間に合うわけです。
エネルギー需要の低い代表的な運動は……
- ジョギング
- ウォーキング
- 有酸素運動全般
などです。
ちなみにエネルギー需要の低い状態は、日常生活動作も含まれます。
パソコン作業、家事、ただ座っているだけでも脂質は使われています。
日常生活動作レベルだとエネルギー供給の8割が脂質です。
有酸素運動になると少し運動強度が上がるので、糖質と脂質を50%50%の割合でエネルギー供給します。
割合だけ見ると日常生活の方が脂質がたくさん燃えそうに感じますが、有酸素運動のほうが総量は上です。
これは有酸素運動のほうが、消費カロリーが高いからです。
わかりやすく30代の平均的な体格の男性で上記の比較を例えると……
日常生活レベルの軽い運動強度で生活した場合の1日の消費カロリーは約2200kcalです。
日常生活動作は8割が脂質供給ですから……
2200×0.8=1760kcal
激しい運動を一切しないと仮定した場合、1日に1760kcal分の脂質を燃やしている計算になります。
これを1時間どれくらいの消費カロリーか?に換算すると……
1760÷24(時間)=73kcal
1時間73kcalを脂質で消費していることになります。
このカロリーを体脂肪から分解した脂質何グラムで消費するかというと……
73kcal÷7.2kcal(体脂肪1g=7.2kcal)=約10g
1時間に約10gの脂質を使う計算になります。ここまでが日常生活レベルのお話。
次にこの30代男性が1時間ウォーキング(有酸素運動)したら、どれくらいの脂質を燃やすか計算してみます。
文科省の調査を参照に平均体重から消費カロリーを計算してみます。
30~34歳の平均体重をみてみると、67.48kgです。わかりやすく67kgで計算してみます。
早歩きのメッツ値は5メッツ(分速107m、時速6.4km)です。
メッツ / METs(めっつ)
運動強度の単位で、安静時を1とした時と比較して何倍のエネルギーを消費するかで活動の強度を示したもの。 メッツとは運動や身体活動の強度の単位です。 安静時(横になったり座って楽にしている状態)を1とした時と比較して何倍のエネルギーを消費するかで活動の強度を示します。
引用元:eヘルスネット 厚生労働省
これを消費カロリーの計算式(メッツ×体重×時間h×1.05)にあてはめて求めると……
5メッツ×67kg×1時間×1.05=約352kcal
です。
1時間に352kcalを消費します。
有酸素運動では脂質が50%使われますので、脂質が担当するカロリー量は……
352kcal×0.5=176kcal
です。
これを体脂肪1g7.2kcalで割ると……
176kcal÷7.2kcal=24.4g(約24g)
になります。
日常生活強度の1時間が10gに対して、ウォーキング1時間では24gの脂質が使われることから、有酸素運動の方がたくさんの体脂肪が燃えていることがわかります。
タンパク質
糖質や脂質と違って、唯一窒素を含む栄養素です。
糖質と脂質は、炭素、水素、酸素から構成されている為、お互いが簡単に変換可能です。
良く耳にする誤解で、「筋肉が脂肪に変わっちゃう~」がありますが、そもそも窒素がある為、構造が違います。
ということで、筋肉から脂肪にはなりません。逆に脂肪から筋肉に変わることもありません。
ですので、「筋肉をつけると脂肪に変ったとき困るから……」のような訳のわからない論理は捨てて頂き、どんどん筋トレしましょう!
話が逸れましたが、エネルギー源としてのタンパク質は1g=4kcalです。
しかしながら、タンパク質はヒトの身体(筋肉、皮膚、爪、髪、内臓、血液など)を構成するための栄養素なので、基本的にはエネルギーとして使われません。
糖質=普通預金、脂質=定期預金と前述しましたが、タンパク質はこの両貯金が底をついたときに、エネルギーに変換され使われます。自らの身体(タンパク質)を分解して糖に変換してエネルギーにするのです。
専門的には糖新生(とうしんせい)といいます。
お金に例えれば、貯金が尽きて現金が無くなって生活に困ったときに、金目の物を売ったりしてお金を作る行為に似ています。これって極限の状態ですよね?
ヒトの身体の場合は、栄養失調や症状の激しい病気などに掛かると、筋肉などが分解されますが、こんな状態は普通めったに起きません。
シンプルに言い換えれば、余程のことが起きない限り、タンパク質はエネルギーにならないという事です。
ということで、タンパク質をエネルギーとして使う状態は身体にとって極限に危機ですので絶対に避けましょう。絶食・断食なんてもっての外です。
有酸素運動はなぜ20分以上なのか?
ここまでの説明で、
「脂質は定期預金みたいなもので、大量のエネルギーが保管されているが、エネルギーとして使える状態にするには、時間が掛かる」
ということがお分かり頂けたかと思います。
これこそが有酸素運動20分説の答えでもあるのですが、脂質のエネルギー供給経路は複雑で時間が掛かる為、日常生活レベルよりも消費カロリーの多くなる有酸素運動では、元々血中に溶けている遊離脂肪酸だけでは、その需要に全て応えられません。
需要にしっかりと応えられるには、20分くらい掛かるのです。ここまで来てやっと、体脂肪が遊離脂肪酸として、血中に溶け出してくると言われています。
じゃあ20分以下は意味がない?
日常生活では脂質が80%、有酸素運動に移行するにつれて糖質50%脂質50%、筋トレやダッシュなど無酸素運動は100%近くが糖質へと、運動強度で糖質と脂質の使用割合が変わるだけで、常に両者は使われています。
ですから有酸素運動が20分以下であっても、全く使われていないわけではありません。
20分以上の方が体脂肪を燃やすには効率が良いというだけです。
例え5分でも、もともと血中にある遊離脂肪酸は燃えますし、糖質も使われますから、身体に無駄な糖質が残りません。
ヒトは、余った糖分を脂肪に変換して、身体に蓄える機能を持っていますから、体脂肪蓄積を防ぐには5分でも行うことが大切です。
「20分できないなら今日はや~めた!!」
と思っていた方!
今日から出来る時に短い時間でも有酸素運動を開始しましょう。そしてコツコツ継続しましょう。これが1週間、1か月、1年と蓄積すれば、物凄い消費カロリーになります。
減量は結局のところ……
摂取カロリー<消費カロリー
です。
家事でも何でもいいのです。身体を動かす習慣を身に付ければ、理想の体型になれますよ~。
さいごに
「有酸素運動20分以上」について考察してみました。
単純に20分以上は燃焼効率が上がるだけです。
もちろん体脂肪をどんどん減らすなら20分以上の運動に越したことはありませんが、健康管理の為なら短時間でも糖質・脂質をチョコチョコと燃やす習慣が大切であることがお分かり頂けたかと思います。
なによりも、無駄に糖分を余らせない(カロリーを余らせない)こと、いいかえれば消費カロリーを稼ぐことが大切なんです。
ちなみに並行で筋トレをして筋量を維持・向上すると、さらに代謝効率が上がります。
理想の身体を目指して有酸素運動・無酸素運動と様々な運動を習慣にしてみましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。