トレーニング指導に携わらせて頂いていると、そのクライアントが抱えている様々な疾患と関わることになります。
この記事は、その疾患の一つで手首の小指側が痛いTFCC損傷についてです。
目次
TFCC損傷とは
TFCC損傷……
TFCC?
アルファベットがあるだけでややこしそう……
この聴き慣れないTFCCという言葉ですが、これは手首の小指側(尺側)に存在する……
三角線維軟骨複合体
のことを指します。
TFCCは、
- triangular(三角)
- fibrocartilage(線維軟骨)
- complex(複合体)
の頭文字を取った略称です。
要するに、【手首の小指側(尺側)に存在する】、【三角状の線維軟骨組織を形作る関連部位に】、【痛みを発症する】整形外科疾患です。
よく腱鞘炎と間違われます。
それでは、TFCCの解剖図を見てみましょう。
出典:プロメテウス 解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第2版 医学書院
なんだかゴチャゴチャとややこしいですが……
この中で赤い四角でマークした手の背側・掌側の尺骨と橈骨をつなぐ靭帯、関節円板を特にTFCCといいます。
これに尺側側副靭帯、尺骨舟状靭帯、尺骨三角靭帯を含めることもあります。
シンプルにまとめると靭帯と軟骨の集合体ということです。
この部位を捻挫したり、日々負担が掛かる動作を続けていると、手首に捻じれストレスと圧縮力が掛かり、これらの組織に傷みや炎症が起きます。
炎症が起きると、手関節(手首)の尺屈や前腕の回外動作などで痛みが出ます。
尺屈
回外
これらの動作で痛みを感じるようになったらTFCC損傷の可能性が高いです。
日常生活動作に置き換えると、タオル絞りやドアノブの開閉動作などです。
TFCC損傷の原因となる動作
この部位を捻挫したり、日々負担が掛かる動作を続けていると、手首に捻じれストレスと圧縮力が掛かり、これらの組織が傷みや炎症が起きると前述しましたが、具体的にはどんな原因動作があるのかを見ていきましょう。
スポーツ動作の場合
- テニス
- ゴルフ
- 野球
- バレーボール
- バスケットボール
- 柔道
- 相撲
- 体操
- アメフト・ラグビー
などです。
テニス、野球、ゴルフ、体操などは手首に少しづつダメージが蓄積するタイプで、柔道、相撲、アメフト、ラグビーなどのコンタクトスポーツは、転倒や相手からの激しい外力で、手首に一気にダメージを受けるタイプです。
その他の動作の場合
- ピアノやバイオリンなど楽器を演奏する人
- デスクワークでパソコンの入力作業やマウス動作
- あん摩マッサージ指圧師の仕事
- 美容師、理容師の仕事
あくまでもよくある例ですが、手首や指を良く使う動作であれば、どんな動作でもTFCC損傷になることがあります。
TFCC損傷その他の原因
他の関節系の疾患もそうですが、加齢によることも発症の大きな原因です。
どうしても筋肉や腱、靭帯などが硬くなるので、関節の動きを阻害します。
動きの悪い関節を放置して無理やり動かし続けると、軟骨や関節円板など関節を守るクッションたちが擦り減っていってしまうため、ある時点から急に痛みが出てきます。
また尺骨が生まれつき長い人や元々正常な長さでも尺骨を骨折後、整復が上手くいかず奇形になって固まると、尺骨を覆うTFCCはストレスを受けることがあります。
TFCC損傷の治療法
どんな疾患もほぼ同じですが、基本は保存的治療法です。
これでも改善がみられない場合に手術療法を選択します。
MRGはパーソナルトレーニングと鍼灸マッサージが専門ですので、保存的治療法を説明します。
まず強い痛みを感じたら、RICE処置が基本です。とにかく炎症症状を抑えて痛みレベルを下げましょう。
患部は動かさないことが基本です。
テーピングやサポーターで固定圧迫をし、急性期は氷で冷やしましょう。
ある程度痛みが引いてきても痛みが鈍く残るうちは、日常生活動作の際にサポーターを装着することも大切です。
サポーターである程度動きを制限することで、TFCCへの負担が大幅に減り、炎症症状も一気に引いてきます。
床に手を付く動作は厳禁です。
あまりにも痛みが強い場合は、RICE処置だけでは痛みの緊張が抜けないので鎮痛薬を併用しますが、ここはお薬の話なのでお医者さんに相談してください。
痛みがほぼ消失しても、治ったと判断せず、再発させないように日頃から前腕部のトレーニングや鍼灸マッサージ・ストレッチングを行いましょう。
トレーニング
- リストカール
- リストエクステンション
です。
前腕の筋力バランスを整えます。
痛みが出る範囲までは動かさないようします。
また捻り(ひねり)を加えないように細心の注意を払いましょう。
ストレッチング
手のひらを正面に向けたり、自分側に向けたりと前腕の屈筋群と伸筋群をバランスよく伸ばすのがポイントです。
健常者はこれにひねりを加えるとさらに効率良く伸ばせますが、TFCC損傷の方は以下のような捻り(ひねり)動作厳禁です。
鍼灸マッサージ
手の甲側の経穴(ツボ)
- 合谷(ごうこく)
- 偏歴(へんれき)
- 曲池(きょくち)
- 支正(しせい)
- 陽谷(ようこく)
- 腕骨(わんこつ)
出典:新版 経絡経穴概論 第2版 医道の日本社
手のひら側の経穴(ツボ)
- 通里(つうり)
- 大陵(だいりょう)
出典:新版 経絡経穴概論 第2版 医道の日本社
などの経穴を狙います。
これらの経穴(ツボ)は手首の痛みに効くとされています。
但し、あくまでも教科書的なお話なので、経穴(ツボ)と位置がズレていたとしても、痛みがある点(阿是穴:あぜけつ)をしっかりと探すことが大切です。
さいごに
- 手や指を良く使う仕事や趣味をする
- ラケットやボール、バットなど道具を使うスポーツをする
- 激しいコンタクトの多いスポーツをする
以上にあてはまる方は要注意です。
日頃から腰や下半身、肩回りはストレッチするけど、指や手首まではしないという方も多いです。
トレーニングも然りで、全身を効率良く鍛えるスクワットやデッドリフトなどはしっかり行っていても、手首、指までは鍛えないことの方が多いです。
上記の条件に当てはまる方は、特に手の先までケアやトレーニングを心がけましょう。
具体的なトレーニング方法やマッサージ・ストレッチングについては是非MRGにご相談ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。